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2019 年度 実施状況報告書

辛味性(口腔内TRPV1活性化)発汗による選択的脳冷却の検討:熱中症予防への応用

研究課題

研究課題/領域番号 17K01828
研究機関愛知医科大学

研究代表者

犬飼 洋子  愛知医科大学, 医学部, 講師 (10308950)

研究分担者 岩瀬 敏  愛知医科大学, 医学部, 教授 (90184879)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード味覚性発汗 / カプサイシン / カプシエイト / ワサビ / TRPV1 / TRPA1 / 辛味 / 痛み
研究実績の概要

本研究では「Ⅰ.カプサイシン受容体TRPV1が選択的脳冷却をどの程度促進するか」を検討する前に、「Ⅱ. 辛味性発汗を引き起こすのはTRPV1に特異的か」を明確にすることが重要である。昨年度に引き続き、「味覚(辛味)性発汗は、熱刺激受容体であるTRPV1活性化に特異的か、もしくは冷刺激受容体であるTRPA1活性化でも起こるか。」について、健常被験者1名(54歳女性)において、予備実験的に検討した。
[方法] TRPA1を活性化する成分として一味唐辛子、生姜、TRPA1を活性化する成分としてワサビの各々少量を、舐るまたは咀嚼することを、日を変えて3回行い、反応としての顔面・頭部の発汗出現の自覚を定性的に観察した。ワサビは本わさびと力強い辛みの西洋わさびとの混合製品である。[結果]一味唐辛子を舐める、生姜を咀嚼した時は、それらの数秒後から顔面・頭部で著明な発汗が出現し、その後数秒間持続した。この反応は毎回みられた。一方、ワサビでも顔面・頭部に発汗が出現したが、それは3回中2回であった。また、舐めて比較的直後から、ツンとした嗅覚とともにであり、それは持続的ではなかった。
[考察] 一味唐辛子(TRPV1)、生姜(TRPV1)、ワサビ(TRPA1)全部によって味覚性発汗は誘発されるが、その特徴すなわち程度、持続、頻度がTRPV1がTRPA1より大きいという自覚であった。
[結論] 味覚性発汗は、口腔内TRPV1活性化により特異的に起こるものと、痛み感覚によるものとの両方によるかもしれない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

予定では、計画した被験者数による、計画した定性・定量的方法での実験を、当該年度に行うはずであった。しかし、
1. 学生を被験者として募集することは、当講座で従来行われてきたが、平成31年度に当学の倫理委員会で「当該研究を実施する研究者が担当する授業科目又は実習等の成績評価期間外でなければならない」との取り決めがなされたため、教員である研究代表者は被験者募集が現実的にほぼ不可能となった。
2. 研究代表者の他の業務が多忙(学生の教育、国際学会での招待講演、多数の国内外の学会発表)であった。
3. 20年間使用してきた実験機器が、当該年度に故障した。
4. 理由1により、被験者として学生の募集を成績評価が終了した春休みに予定していたが、当該年度の1月から新型コロナウイルス感染拡大の問題が発生し、3つの条件(換気の悪い密閉空間,多くの人が密集,近距離での会話や発話)が重なることを徹底的に回避する対策が不可欠となり、当該実験は人工気候室内で密閉して、被験者と験者が会話も含め近接して行うゆえこれに値するため、全く不可能となった。

今後の研究の推進方策

新型コロナウイルス感染の恐れが無くなり次第、実験を開始したい。
本研究の申請当初、味覚刺激物質として、食品である唐辛子、生姜、本わさび、和からし(以上、辛味)、ショ糖(甘味)、塩(塩味)、インスタントコーヒー(苦味)、穀物酢(酸味)を予定していたが、濃度を明確にするために、濃度が明確かつ口腔内投与が安全な試薬を用いることにする。TRPV1、TRPA1物質の試薬は今後検索し、無ければ当初の方法で行う。その他の各味覚刺激物質は市販の試薬がある。
当該年度の実験により、TRPV1のみでなくTRPA1活性化でも発汗する可能性が想定された。よって、味覚性発汗の誘発は、受容体の違いによるのか、痛みの有無によるのか、また発汗の性質はそれらにより異なるかの視点が必要である。よって各刺激による発汗の程度すなわち発汗開始時点、持続、範囲、頻度等を、ミノール法、サーモグラフィ、局所発汗量連続測定により詳細に検証する。とくにTRPV1は痛み、酸、43℃以上の熱のいずれでも活性化されるので、それぞれによる発汗反応の性質の違いに留意する。よって研究方法に、①温湯(TRPV1が最も活性化する48℃)を口に含んだ場合、②痛み刺激として“たわし”を口腔内に含んだ場合、を追加する。TRPA1を活性化する物質として炭酸水(Yuanyuan et al., 2010)を追加する。本研究は、口腔内の活性化箇所の検討でなく、また、刺激箇所による反応の不安定さを生じさせないように、全味覚物質による刺激方法を、全口腔法に変更する。結果により、「Ⅱ. 辛味性発汗を引き起こすのはTRPV1に特異的か、もしくは痛みでも起こるか」の結論を導く。
同時に、「Ⅰ.カプサイシン受容体TRPV1が選択的脳冷却をどの程度促進するか」についての検証を、計画通り進める。

次年度使用額が生じた理由

理由は【現在までの進捗状況】の遅れている理由に示したとおり、当該年度は1. 被験者として学生を募集する従来からの方法が、当該年度に当学の倫理委員会が禁止と取り決めたため、募集が現実的に不可能となった、2. 研究代表者の他の業務(国際学会での招待講演、学生の教育等)が多忙であった、3. 実験機器が、当該年度に故障した、4. 当研究の実験が、3つの条件(換気の悪い密閉空間,多くの人が密集,近距離での会話や発話)が重なるため、新型コロナウイルス感染防止のため不可能となったからである。
政府による緊急事態宣言が解除されても、当実験は3つの条件が重なるため、新型コロナウイルス感染が収束しないと、再開は難しい。メディアでは感染蔓延は1年後等まで続くとも言われており、使用計画を更に延長申請をする必要があると思われる。
費用は主に被験者への謝金として使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2020 2019

すべて 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)

  • [学会発表] 塩化アルミニウム長期制汗治療を行った全身性多汗症患者における多汗残存部位での皮膚交感神経活動2020

    • 著者名/発表者名
      犬飼洋子、岩瀬 敏
    • 学会等名
      【発汗異常を伴う稀少難治性疾患の治療指針作成、疫学調査の研究】2019年度 第2回班会議
  • [学会発表] 無汗部位を伴う分節性/半側性多汗症は代償性である:生理的皮膚圧─発汗反射の類似した出力相の機序からの推論 Segmental or unilateral hyperhidrosis accompanied by anhidrosis in another area may be compensatory: estimated based on the mechanism of the similar efferent phase of the physiological skin pressure-sweating reflex2020

    • 著者名/発表者名
      犬飼洋子,岩瀬 敏,佐藤元彦
    • 学会等名
      第97回日本生理学会大会
  • [学会発表] Effect of blue light blocking glass on clock gene expression, melatonin secretion and sleep quality in humans2019

    • 著者名/発表者名
      Maki Sato, Sayo Oishi, Chihiro Kodama, Yoko Inukai, Mika Kamiya, Naoki Nishimura, Dominika Kanikowska, and Satoshi Iwase
    • 学会等名
      Experimental Biology 2019
    • 国際学会
  • [学会発表] Proposal for the classification of sweating disorders based on lesion site for accurate treatment2019

    • 著者名/発表者名
      Yoko Inukai, Satoshi Iwase
    • 学会等名
      11th Congress of the International Society for Autonomic Neuroscience (ISAN 2019)
    • 国際学会
  • [学会発表] Segmental or Unilateral Hyperhidrosis Possible Compensatory Mechanisms Estimated Based on the Mechanism of the similar Efferent Phase of the Physiological Skin Pressure-Sweating Reflex2019

    • 著者名/発表者名
      Yoko Inukai
    • 学会等名
      The 13th World Symposium of the International Society of Sympathetic Surgery (13th ISSS)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 病変部位に基づいた発汗障害の分類の提案─的確な治療への導入のために2019

    • 著者名/発表者名
      犬飼洋子、岩瀬 敏
    • 学会等名
      第72回日本自律神経学会総会
  • [学会発表] 自律神経,体性神経系,高次神経機能の関連─新しいパラダイムの提案2019

    • 著者名/発表者名
      岩瀬 敏,〇犬飼洋子,西村直記,塚原玲子
    • 学会等名
      第47回 自律神経生理研究会

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公開日: 2021-01-27  

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