研究実績の概要 |
1995-2015年代のWHOの国際死因分類第20章損傷及び死亡の外因死亡W00-W17転倒転落、熱中症・低体温症など自然の力による環境病の解析を時系列解析で求め、気候関連死亡率を評価した。ICD-10コードからX30過剰な暑熱による疾病、T67熱中症、X31過剰な低温による疾病、T68低体温症、X38濁流による被災者、X37嵐による死亡、X33太陽光線による被災者を抽出した。性年齢及び年代(時代)グループに分けてロジスティック回帰分析によって調整されたオッズ比を求めた。約93,000死亡総数の0.41%が気候関連死亡であった(1995-2015)。寒冷関連死亡と熱関連死亡と比べると寒冷関連死亡が大きく、その傾向は男で顕著であった。40-45歳年齢を基準にして80歳以上の死亡率は有意に上昇していた。調整されたオッズ比はX30(T67)60-64歳2.53(2.58)、70-74歳5.26(5.21)、80-84歳16.9(16.4)、X31(T68)60-64歳3.69(4.85)、70-74歳5.09(7.72)、80-84歳11.7 (19.5)であった。気候変動の影響は高齢層に顕著であった。子どもに関しては、猛暑で2.94倍(10歳,2003)、2.31倍(15歳,2011)の増加を示したが、温度との関連は明確でなかった。80歳以上の死亡傾向は先行研究と一致した。本研究によって年齢階級別気候関連死亡率の傾向がより明確となった。気候変動関連死の熱影響の傾向を求める場合、X30とT67を併記して記載する必要性を考察した。2011年東北大震災による災害死は我国の死亡動向のなかでは特記すべき所見であった。
|
今後の研究の推進方策 |
外気温と骨折・転倒とのモデル化を行う。気温以外の湿度、Time-Lagの考察について時間がかかることが予想される。Optimum Temperatureがあるのか否かを検証する。その際には湿度の変数も追加し、関連性を求めるが、国内外の専門家と協議する。海外の環境疫学専門家の指導・討議を経て、理解可能なベストモデルを作成する。また、出来上がった図表などの整理、視覚化を図る。Gasparrini(2016)は、Time Series Analysis をヨーロッパの都市間での年間気温と全死亡の関係を調査し、ポアソン分布が適応しているのかを参考にできるかについてモデルの検討を行う。 本研究は,一日の気温と骨折・転倒転落による死亡率の関連を明らかにすることを目的とする。骨折・転倒は要介護の一要因であり、その後の転倒恐怖感などによってフレイル、認知症の要因となる。一方気候変動とヒートアイランド現象によって予期せぬ超過死亡が発生している(Quantitative risk assessment, WHO, 2015)。骨折や転倒の環境要因である気温を因子として時系列解析する意義は大きい。約40 年間の一日死亡率の解析によって骨折・転倒死亡率が増加する臨界温度を明らかにする。一日ごとの気温とその骨折・転倒死亡数を時系列解析Time Series Regression Analysis(Gasparrini, A, 2016)によって明らかにすることで、骨折・転倒死亡率の増加する臨界温度が明らかになる。このことにより早期の転倒予防策につながることが期待される。各専門家の知見をさらに得て総合的見地からの結論を提出したい。
|