研究課題
パークスらは負傷による死亡と異常に暖かい月間気温との関係を調査し、地球規模の変化と負傷による死亡率の関連性が高まっていることを認めた(Nat. Med.26, 2020)。彼らは、特定の月の気温、傷害による死亡率が、全38年間の研究期間にわたる州の長期平均よりも高かったことを発見した。京都と札幌で45年間にわたり、月別の負傷による死亡者数の調査を行ったところ、季節性の変動と、生活習慣病(NCD)、不慮の事故・外傷に対する月別の気温の影響が検出された。目的:転倒・外傷による死亡率に対する気候変動の影響を観察するために、1971年から2017年までの京都と札幌での意図しない負傷(不慮の事故)による死亡と月間気温との関係を調べた。データソースと方法:1971年から2017年にかけて、京都と札幌で発生した意図しない外傷(ICD-10コーディング、V01-V99、交通事故V01-V99、落下W00-W19を含む)による月別の気温と月別の死亡率の関係を分析した。対数線形モデルを使用して、月間の傷害による死亡率と気温の関連を分析した。結果と考察:京都の最低死亡温度(MMT)には、京都摂氏19度、札幌摂氏9度の違いがあった。京都の死亡リスクは、低温域で摂氏1度あたり相対危険度RR1.03、95%信頼区間 1.01-1.06の上昇を認め、高温域では、同様RR 1.06、95%信頼区間 1.02-1.10の上昇を認めた。夏の死亡率は気温の上昇とともに京都でも増加している。札幌では、冬の気温の上昇に伴い季節変動が減少する傾向があった。データの限界は外気温についてのみ解析したことである。環境として気象条件、なかでも湿度や一日の最高気温と最低気温の差の影響についての解析は別の分析を必要とする。結論:低温での季節効果の変化は、低温域でのリスクに大きな影響を与えることがわかった。
3: やや遅れている
2019年度はデータ入手の遅れなどで解析が遅れた。また、2020年5月に開催される予定の国際会議が新型コロナ感染蔓延で延期になったため成果発表による評価が遅れている。
2020年度は対面式の国際学会が中止となっており、ネットでの開催になる可能性が大きい。その発表準備にあてること、さらに気候変動の論文が発表されておりその解析方法を検討し現在の研究に取り入れるよう働きかけたい。また、現在の統計システムについて限界を明らかにし、今後のシステム形成の一助を担いたい。
成果発表である国際学会発表が1年遅延したため、令和2年度旅費として充当する。当初の予定でのデータマイニング・解析が遅れた。そのことで抄録の作成に遅れが生じたために成果発表である令和元年国際学会発表ができなかった。対策として2020年度の国際学会で発表することに変更した。
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Nippon Ronen Igakkai Zasshi. Japanese Journal of Geriatrics
巻: 56 ページ: 487~497
10.3143/geriatrics.56.487
日本転倒予防学会誌
巻: 6(1) ページ: 19-24
International Journal of Gerontology
巻: 1 ページ: s23-28
巻: 1 ページ: s18-22