研究課題
目的:転倒・外傷による死亡率に対する気候変動の影響を観察するために、意図しない負傷(不慮の事故)による死亡と月間気温との関係を調べ、生活習慣病の死亡動向と比較し、疾患固有のOT値(最適気温値―最小死亡となる気温)を求めることである。方法:1971年から2017年にかけて、京都と札幌で発生した外傷(ICD-10コーディング、V01-V99、交通事故V01-V99、落下W00-W19を含む)及び生活習慣病の月別性別年齢別死亡数を記録し、性別5歳階級別死亡率を算出した。基準人口から都市間の年齢補正を行い、月別性別死亡率を調整した。2001年以降の気象データ(気象庁発表)から最高気温、最低気温、月平均気温を入力した。対数線形モデルを使用して、気温と月別死亡率の関係を分析した。2019年度までは、京都と札幌で45年間にわたり、月別の気温の影響を検出した。2020年度は、全国の月別死亡数(0歳-100歳)を人口動態統計資料に伴いデータ入力および解析を行った。データは、2018年から2020年10月を追加した。結果と考察:追加データを加えて、対数線形モデルによる解析の結果は、京都の最低死亡温度(MMT)には、京都摂氏19度、札幌摂氏9度の違いがあり、京都の死亡リスクは、低温域で摂氏1度あたり相対危険度RR1.04、95%信頼区間1.01-1.05の上昇を認め、夏の死亡率は気温の上昇とともに上昇傾向、札幌では、冬の気温の上昇に伴い季節変動が減少する傾向など、従来の結果と同様の結論が得られた。また、年齢別には気温の上昇に伴う影響が相違する可能性が見いだされた。一方、2020年の分析は新型コロナ感染の影響を踏まえて死亡数にどのように影響があるのかを分析している。結論:低温での季節効果の変化は、2010年以降から認められるが、2015年以降はさらに顕著になっている。
3: やや遅れている
1971年-1990年の古い資料の入手が遅れている。古い人口動態統計は紙ベースであり、国会図書館関西館および北海道立図書館のサービスが一時的に閉鎖されたことによる。一方2019年以降のデータ入手は順調に終了している。また、2020年は国際会議が開催されないために、欧米データとの比較、意見交換が十分に行われていない。2021年も国際会議はネット開催であり、意見交換等の場を模索している。
2001年以降の転倒・転落の死亡及び比較としては生活習慣病の死亡と温度との関係をデータ入手及び基本解析は終了している。最新の公開データを追加するが、新型コロナ感染状況から図書館での利用を制限されることから、古いデータ入手は制限されると予想している。そこで、ICD分類の変化による誤分類の程度を推測し、取得データから外挿法による推計値を用いて気温と死亡の関係を調整したい。線形モデルの適応は2001年以降に限って発表し、年齢別の影響を推測する。ネットの国際会議にて意見交換をする。
オンライン国際学会での発表抄録登録費および参加費、国内専門家との数理モデルを使った解析および最終打合せに関わる費用
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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