本研究の目的は、行動変容理論である自己決定理論と社会的認知理論を用いて、女性におけるライフイベント時の身体活動に影響を及ぼす心理社会的要因を解明することである。これまでの調査において、子育て期の女性における身体活動を規定する関連要因として、運動自律的動機づけおよび運動セルフ・エフィカシーの2つの心理的要因が重要な役割を果たしていることを明らかにした。今年度は、それらの明らかになった関連要因、運動自律的動機づけおよび運動セルフ・エフィカシーと運動行動変容ステージとの関係を明らかにする分析を進めることにした。その結果、運動自律的動機づけは非運動実施者と運動実施者との間に統計的な有意差が認められた。一方、運動セルフ・エフィカシーは非定期的運動実践者と定期的運動実践者との間に統計的な有意差が認められた。つまり、子育て期の女性における身体活動を規定する関連要因として明らかになった運動自律的動機づけおよび運動セルフ・エフィカシーは、運動行動変容ステージの移行において異なる影響を及ぼしていることが示唆された。本研究から得られた結果は、子育て期の女性における身体活動支援を検討する際に、有用な基礎資料として活用していく予定である。
|