研究課題/領域番号 |
17K01839
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
竹越 一博 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40261804)
|
研究分担者 |
中田 由夫 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00375461)
大森 肇 筑波大学, 体育系, 教授 (20223969)
前田 清司 筑波大学, 体育系, 教授 (30282346)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | レナラーゼ / 生活習慣病 / カテコールアミン |
研究実績の概要 |
レナラーゼは、2005年に発見されたフラビンアデニンジヌクレオチド依存性の可溶性モノアミンオキシダーゼである。主に腎臓で発現するが、心臓、肝臓、肺、そして骨格筋などで発現が確認されている。当初、主な機能は循環カテコールアミンを代謝することによって、心機能および全身血圧の制御に関与する機能と報告された。一方、その後の研究の発展に伴い、現在では、サイトカインのような生理活性物質として注目を集めている。特に、酸化ストレスに対する応答や抗酸化力に関する報告が増えている。すなわち、レナラーゼは酸化ストレスが発生する生活習慣病である糖尿病や高血圧と関連があると報告されている。外国の先行研究で、レナラーゼ3種類の多型が上記疾患の分子マーカーとなることが報告された。
29年度に申請者らは1)運動により血清レナラーゼが上昇することを初めて見出した。つまり、レナラーゼの主な発現器官である腎臓において、ヒトを対象にした走行試験では腎機能が低下し(業績2)、動物モデルの試験でレナラーゼ発現が低下した。一方、ラットの骨格筋で運動によりレナラーゼ発現は増加した。(Tokinoya K et al, Submitted )。また、骨格筋にレナラーゼの受容体であるPMCA4bの発現も確認した。2)骨格筋におけるレナラーゼ産生のメカニズムの一要因として、運動による酸化ストレスとカテコールアミンの関与を考え、骨格筋細胞にて過酸化水素およびカテコールアミン添加によりレナラーゼの発現が増加することを示した。(業績1、Tokinoya K et al, Submitted)
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は日本でレナラーゼを研究している唯一のグループの責任者である。最近、以下のデータを発表している。 1)動物モデル(ラット)の走行試験において、運動に伴い血中レナラーゼレベルは増加することを世界で初めて明らかにした。 2)運動によるレナラーゼレベルの増加に骨格筋でのレナラーゼ産生が関与することを示した。つまり、レナラーゼの主な発現器官である腎臓において、ヒトを対象にした走行試験では腎機能が低下し、動物モデルの試験ではレナラーゼ発現が低下した。一方、ラットの骨格筋で運動によりレナラーゼ発現は増加した。(Tokinoya K et al, Submitted) 3)骨格筋におけるレナラーゼ産生のメカニズムの一要因として、運動による酸化ストレスとカテコールアミンの関与を考え、骨格筋細胞にて過酸化水素およびカテコールアミン添加によりレナラーゼの発現が増加することを示した。(Yoshida et al.,2017.b)(Tokinoya K et al, Submitted)
|
今後の研究の推進方策 |
1)習慣的な運動がレナラーゼKOマウスへ及ぼす影響と、肥満時に習慣的な運動を行った際のレナラーゼ動態を検証することで生理的意義の解明を目的とする。 酸化ストレスに対する保護効果を有するレナラーゼにおける検討と、肥満させることで生活習慣病(酸化ストレス)を誘発し、運動による改善がどの程度まで可能かを目的とする。本研究においてレナラーゼKOマウスを用いることで、レナラーゼの生理的意義の解明に繋がることが期待される。加えて、肥満状態のレナラーゼの変化を運動介入による改善を図ることで、生活習慣病に対するバイオマーカーとなる可能性を示唆できるかもしれない。 レナラーゼは、心疾患、腎疾患をはじめとする病態に対する研究が海外を中心として数多く行われている。近年では、酸化ストレスに着目した研究も増えて来ている。しかしながら、運動による報告は、ほとんど存在しない。さらに、KOマウスを用いた細胞保護の観点は報告がない。我々は未だ報告のない、レナラーゼKOマウスに関する細胞保護とレナラーゼの関連に加えて肥満に対する運動の効果を国内外で初めて報告するために研究活動に取り組む予定である。 2)レナラーゼ多型は検体を収集中である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入費に見合う適当な物品がなかったため。来年度費用と合算して消耗品の購入に用いる
|