研究課題
平成29年度はFGF21 遺伝子のDNA 脱メチル化の亢進が成獣期のエネルギー消費に直接影響を及ぼすかをヒトリコンビナントFGF21 およびFGF21 ノックアウト(KO)マウスを用いて検討した。野生型マウスの成獣期(生後4週(4W)から14Wの10週間)に高脂肪食負荷下にヒトリコンビナントFGF21を投与したところ、11Wからの体重増加抑制効果および、白色脂肪組織の重量減少を認めた。野生型マウス母獣の妊娠期から授乳期にPPARαのリガンドであるWyを投与すると、その産仔(Wy群)の肝臓におけるFGF21遺伝子のDNA脱メチル化が亢進し、成獣期に高脂肪食を与えると対照群と比較して体重増加抑制や白色脂肪組織重量の減少を認めたが、FGF21 ノックアウト(KO)マウスに同様の実験を行っても対照群とWy群の体重および白色脂肪組織の重量に有意差は認められなかった。以上の結果から、野生型マウスで認められたWy群での体重増加抑制および白色脂肪組織の重量減少は、FGF21遺伝子のDNAメチル化状態の差異によって生じたことが示唆された。さらに平成29年度には、PPARαによるDNA 脱メチル化関連因子を探索し、その分子機構を解明する目的で、乳仔期特異的に肝臓でV5 タグ付加PPARαを発現するトランスジェニックマウスを樹立することに成功し、対照となるV5 タグ付加GFPを発現するトランスジェニックマウスも樹立した。またこれまでの成果をまとめ論文発表を行った (Yuan X, Tsujimoto K, Hashimoto K et al, Epigenetic modulation of Fgf21 in the perinatal mouse liver ameliorates diet-induced obesity in adulthood. Nat Commun 9:636, 2018 )。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、平成29年度はFGF21のgain of functionおよびloss of function実験を完遂し、乳仔期特異的に肝臓でV5 タグ付加PPARαを発現するトランスジェニックマウスを樹立することができた。
今後は、乳仔期特異的に肝臓でV5 タグ付加PPARαを発現するトランスジェニックマウスを用いて、抗V5 抗体を用いた免疫沈降を施行。得られた蛋白複合体からPPARαによるDNA 脱メチル化関連因子を探索し、その分子機構を解明する。さらにTALE 融合DNA メチル化酵素を用いてマウス成獣にFGF21 遺伝子に塩基配列(CpG 部位)特異的にDNA メチル化を導入し、成獣期における同遺伝子のDNA メチル化再導入の代謝表現型への影響を検証する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Nat Commun
巻: 9 ページ: 636
10.1038/s41467-018-03038-w
Thyroid
巻: 28 ページ: 395-406
10.1089/thy.2017.0331
http://www.tmd.ac.jp/grad/cme/member/personal/en.html