研究課題
本研究の研究計画の第一段階である手術と高齢者機能評価の転帰との関連に関しては、初年度は集積が遅れたもののその後順調に症例集積し、解析が進んだ。第二段階としてADL低下例に対する介入を予定したが、退院時にADLが低下する割合は約13%と低下症例が少なく解析が困難であった。手術と高齢者機能評価の転帰との関連に関して、国内での成果発表を継続的に行った。これまでの研究において、胃切除術後にCDR-Jを用いて認知機能を評価したところ、スコアは術前と比べて退院時に有意にスコアの低下を認めている。認知症との相関が報告されている血中IL-6やレプチン、血管リスク因子を持つ認知症患者におけるバイオマーカーとしての意義が報告されているアディポネクチン、アルツハイマー病のバイオマーカーとしての意義が報告されているレジスチンの測定を行い、認知機能低下に関与するとされるバイオマーカーの探索を行ったが、術後の認知機能の低下とこれらの血清バイオマーカー値との間に相関は見られず、術後の認知機能の低下に関与するバイオマーカーとはなり得ないことがわかった。研究成果を広く公開するため、海外での成果発表を行うことを考えていたが、COVID-19感染症の流行のため、成果発表の機会を得ることができず、計画を延長していた。しかし、結局海外での成果発表を行うことができなかった。このため、自立度が低下した症例群と維持された症例群の2群において、自立度のバイオマーカーの探索を行うこととした。具体的には自立度が維持された症例と低下した両群の症例の術前血清を用いて、網羅的なたんぱく質の同定および比較定量を行った。これにより自立度に影響すると考えられる候補タンパクを得た。