2017/2018年度は、メタボリック症候群のモデルとして、高果糖食/高脂肪食誘発インスリン抵抗性マウスを用いたが、Sarcopenic Obesityの病態である骨格筋合成低下を示す結果は得られなかった。そこで、本年は、サルコペニアモデルのひとつである老化促進マウス(SAMP1)で、高脂肪食を負荷し、内臓脂肪量や骨格筋量の変化を検討した。SAMP1は、その対照正常マウス(SAMR1)と比較し、骨格筋量と握力が経時的に減少することを以前報告した。EPAの投与はSAMR1の筋量を増加させたのに対し、SAMP1では筋力増加の傾向は示したものの、筋量の増加は認めなかった。今回、6週齢のSAMP1とSAMR1に、普通食または高脂肪食を10週間投与した。高脂肪食投与群では、体重、内臓脂肪量、肝臓重量がSAMR1とSAMP1の両群で増加した。骨格筋量は、普通食群の腓腹筋重量がSAMP1でSAMR1より低下した。さらに、SAMP1群では、普通食群と比較し、高脂肪食群で腓腹筋重量が増加する傾向を示した。また、ヒラメ筋重量は、SAMR1で、普通食と比較し高脂肪食群で増加したが、SAMP1では変化しなかった。足底筋、前脛骨筋、長趾伸筋では、マウスの種類、普通食/高脂肪食に関わらず有意な差はなかった。したがって、老化促進マウスを用いた結果においても、高脂肪食によるサルコペニアの促進は認めず、若年マウスと同様に、むしろ高脂肪食が筋量を増やす可能性が示唆された。有酸素運動やEPAの投与が骨格筋肥大を促進する可能性があり、高脂肪負荷と併用することが、サルコペニアの予防に有効となるかもしれない。一方で、高脂肪食が、老化により増加する骨格筋内での異所性脂肪にどのような影響があるかは検討課題である。高齢者のフレイル予防には、運動と栄養による複合的な介入が重要である。
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