研究実績の概要 |
平成30年度は昨年度に引き続き外来通院群、入院治療群における症例数を増やすとともに細胞間クロストークのマーカーとして細胞外小胞(Extracellular vesicles; EV)の性差についても新たに検討を進めた。肥満小児104名(男児69名、女児35名)を対象とし、血清検体を用いたフローサイトメトリーによりEV数を定量した。EV数は肥満男児24990.8±17589.6個/μL、肥満女児24111.2±19967.9個/μLであり、全体でみた場合、性差は認められなかった。しかしながら、肥満男児では体重、肥満度といった体格要素とEV数に正の相関関係を認めた(それぞれr=0.480, r=0.567, P<0.001)が肥満女児においてその関係は認められなかった。皮下脂肪面積、内臓脂肪面積とEV数の関連においても肥満男児ではそれぞれr=0.345、r=0.346(P<0.05)の正の相関を示したが、肥満女児では認められなかった。血圧、血液生化学などの生活習慣病危険因子とEV数との関連においては男女とも中性脂肪とEV数との間に有意な相関関係が認められた(肥満男児r=0.629、肥満女児r=0.573, P<0.01)。以上の結果より、肥満男児では脂肪量の増加にともない細胞間の情報伝達に関わるEVが増加し、他の臓器とのクロストークが増加している可能性が示唆された。 入院治療群6名(男児3名、女児3名)において、入院にともなう肥満の改善とEV数の変化について検討した。EV数は41921.3±34384.0個/μLから21852.3±6097.8個/μLへ低下したが有意差は認められなかった(P=0.116)。一方、中性脂肪の減少率とEV数の減少率は有意な相関を示し(r=0.825、P<0.05)、性に関わらず中性脂肪の変動がEV数と深く関わる可能性が示唆された。
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