高齢者の熱中症予防は社会的・医学的な緊急課題であり、熱刺激に対する血管反応性の減弱が熱中症の原因の一つと考えられている。本研究は、簡便な歩行運動が発汗を促し体温上昇を抑制することを明らかにしている。さらに、血管内皮機能が良好な高齢者では歩行運動が高温多湿環境での体温上昇を抑制するという結果も得ている。高齢者の血管反応性と熱中症リスクの関係の一端が明らかとなったことにより、FMDを用いた高齢者の熱中症発症リスクの層別化も可能だと考える。本研究の社会的意義は、歩行運動が体温上昇抑制効果を有していることを示した点であり、歩行が可能な全ての高齢者がすぐに熱中症対策を始めることができる可能性を提示した。
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