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2017 年度 実施状況報告書

新規カルシウム依存性脂質代謝酵素GDE7を介した食欲と肥満の制御機構

研究課題

研究課題/領域番号 17K01852
研究機関川崎医科大学

研究代表者

坪井 一人  川崎医科大学, 医学部, 講師 (80346642)

研究分担者 宇山 徹  香川大学, 医学部, 助教 (30457337)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード脂質メディエーター / リン脂質 / 加水分解酵素 / 代謝 / 小腸 / 食欲
研究実績の概要

N-アシルエタノールアミンは食欲抑制・脂肪分解などの作用を示す内因性脂質であり、生活習慣病の主要な原因である肥満を抑制的に制御すると考えられている。しかしながら、その動物組織における生合成機構には不明な点が多い。そこで本研究課題では、申請者らが見出したカルシウム依存性の新規脂質代謝酵素グリセロホスホジエステラーゼ(GDE) 7が、小腸において食餌由来の脂肪酸に応答して活性化されてN-アシルエタノールアミンを生成するとの仮説を実証し、さらに当該酵素の肥満病態における役割を解明することを目的としている。
N-アシルエタノールアミンは特殊なリン脂質であるN-アシル-ホスファチジルエタノールアミン(NAPE)を前駆体として生合成される。これまでに脳におけるN-アシルエタノールアミンの生成機構については解析が進んでいたが、本研究課題で解析対象とする小腸におけるメカニズムについては研究が遅れていた。そこで本年度においては、小腸におけるN-アシルエタノールアミンの生成機構を他の臓器と比較しながら検討する目的で、NAPEからN-アシルエタノールアミンを生成するホスホリパーゼD型酵素であるNAPE-PLDの遺伝子欠損マウスの末梢臓器の解析を行った。その結果、心臓や腎臓、肝臓では、以前に解析した脳と同様に、NAPE-PLD欠損マウスのNAPEレベルが野生型と比べて高かったのに対して、小腸では有意差を認めなかった。従って、小腸ではNAPEの分解におけるNAPE-PLDの役割は限定的であり、他の臓器と異なることが判明した。さらに、NAPE-PLD欠損マウスの小腸ホモジネートにおいても放射標識NAPEからN-アシルエタノールアミンが効率良く生成し、この活性は解析した臓器のなかで最大であった。以上の結果から、小腸におけるGDE7などの非NAPE-PLD経路の重要性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実施計画のうち、「GDE7の活性化機構の解析」についてはNAPE-PLD欠損マウスの末梢臓器の解析を実施し、小腸におけるGDE7経路などの非NAPE-PLD経路の重要性が示唆される結果を得た。これは世界的にも初めての知見である。「GDE7欠損マウスの作出と肥満病態の解析」については準備段階にある。以上のことから、項目毎の達成度については課題があるが、全体としておおむね順調に進展していると言える。予算執行については、酵素活性の測定に使用する放射標識基質調製用のガラス器具の納品が遅れたため少額の次年度使用額が生じたが、進捗状況には影響なかった。

今後の研究の推進方策

本年度の解析は、小腸でのN-アシルエタノールアミンの生成におけるGDE7の重要性を示唆するものである。今後、当該酵素の活性化機構の解析を進めるとともに、GDE7欠損マウスについても研究を推進したい。

次年度使用額が生じた理由

放射標識基質調製用のガラス器具の納品が遅れたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は30年度交付額と合わせ、試薬などの消耗品費に使用する予定である。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] The biosynthetic pathways of N-acylethanolamines in mammals2018

    • 著者名/発表者名
      Binte Mustafiz Smriti Sultana、Uyama Toru、Hussain Zahir、Tsuboi Kazuhito、Ueda Natsuo
    • 雑誌名

      eLS

      巻: - ページ: A27711

    • DOI

      10.1002/9780470015902.a0027711

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Peripheral tissue levels and molecular species compositions of N-acyl-phosphatidylethanolamine and its metabolites in mice lacking N-acyl-phosphatidylethanolamine-specific phospholipase D2017

    • 著者名/発表者名
      Inoue Manami、Tsuboi Kazuhito、Okamoto Yoko、Hidaka Mayumi、Uyama Toru、Tsutsumi Toshihiko、Tanaka Tamotsu、Ueda Natsuo、Tokumura Akira
    • 雑誌名

      The Journal of Biochemistry

      巻: 162 ページ: 449~458

    • DOI

      10.1093/jb/mvx054

    • 査読あり
  • [雑誌論文] An involvement of phospholipase A/acyltransferase family proteins in peroxisome regulation and plasmalogen metabolism2017

    • 著者名/発表者名
      Uyama Toru、Tsuboi Kazuhito、Ueda Natsuo
    • 雑誌名

      FEBS Letters

      巻: 591 ページ: 2745~2760

    • DOI

      10.1002/1873-3468.12787

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Mammalian enzymes responsible for the biosynthesis of N-acylethanolamines2017

    • 著者名/発表者名
      Hussain Zahir、Uyama Toru、Tsuboi Kazuhito、Ueda Natsuo
    • 雑誌名

      Biochimica et Biophysica Acta

      巻: 1862 ページ: 1546~1561

    • DOI

      10.1016/j.bbalip.2017.08.006

    • 査読あり
  • [雑誌論文] グリセロホスホジエステラーゼ・ファミリーによるN-アシルエタノールアミンおよびリゾホスファチジン酸の生成2017

    • 著者名/発表者名
      坪井一人、宇山 徹、上田夏生
    • 雑誌名

      ビタミン

      巻: 91 ページ: 489~496

    • 査読あり
  • [学会発表] cDNA cloning and characterization of calcium independent phospholipase A/acyltransferase-1 long isoform that produces N-acylphosphatidylethanolamines (NAPEs)2017

    • 著者名/発表者名
      Zahir Hussain, Toru Uyama, Katsuhisa Kawai, Iffat Ara Sonia Rahman, Kazuhito Tsuboi, Nobukazu Araki, Natsuo Ueda
    • 学会等名
      第58回日本生化学会中国・四国支部例会
  • [学会発表] 前立腺癌細胞株における抗炎症脂質分解酵素N-アシルエタノールアミン水解酸性アミダーゼ(NAAA)のsplice variantの発現解析2017

    • 著者名/発表者名
      佐倉雄馬、坪井一人、宇山 徹、張 霞、筧 善行、上田夏生
    • 学会等名
      第58回日本生化学会中国・四国支部例会
  • [学会発表] LRATファミリーに属するPLAAT-1の2つのアイソフォームの比較機能解析2017

    • 著者名/発表者名
      宇山 徹、Zahir Hussain、川合克久、Iffat Ara Sonia Rahman、坪井一人、荒木伸一、上田夏生
    • 学会等名
      日本ビタミン学会第69回大会
  • [学会発表] Calcium independent generation of N-acylphosphatidylethanolamines (NAPEs) by phospholipase A/acyltransferase-1 isoforms in humans and mice2017

    • 著者名/発表者名
      Zahir Hussain, Toru Uyama, Katsuhisa Kawai, Iffat Ara Sonia Rahman, Kazuhito Tsuboi, Nobukazu Araki, Natsuo Ueda
    • 学会等名
      第58回日本脂質生化学会
  • [学会発表] Characterizaton of isoforms of the calcium-independent N-acyltransferase PLAAT-1 in humans and mice2017

    • 著者名/発表者名
      Toru Uyama, Zahir Hussain, Katsuhisa Kawai, Iffat Ara Sonia Rahman, Kazuhito Tsuboi, Nobukazu Araki, Natsuo Ueda
    • 学会等名
      27th Annual Symposium of the International Cannabinoid Research Society
    • 国際学会
  • [学会発表] 抗炎症脂質パルミトイルエタノールアミドを加水分解するリソソーム酵素NAAAの前立腺癌細胞株におけるスプライスバリアントの発現解析2017

    • 著者名/発表者名
      上田夏生、佐倉雄馬、坪井一人、宇山 徹、筧 善行
    • 学会等名
      第38回日本炎症・再生医学会
  • [学会発表] エイコサペンタエン酸による糖尿病性血管内皮機能障害に対する慢性投与の治療効果および血管への直接作用2017

    • 著者名/発表者名
      竹之内康広、坪井一人、大竹一男、加園恵三、岡本安雄
    • 学会等名
      第132回日本薬理学会近畿部会
  • [学会発表] 脂溶性バイオファクターであるN-アシルエタノールアミンの生合成機構2017

    • 著者名/発表者名
      宇山 徹、坪井一人、上田夏生
    • 学会等名
      2017年度生命科学系学会合同年次大会(第40回日本分子生物学会年会・第90回日本生化学会大会)
    • 招待講演
  • [学会発表] 脂質メディエーターであるN-アシルエタノールアミンとリゾホスファチジン酸の新規生合成機構2017

    • 著者名/発表者名
      坪井一人、Iffat Ara Sonia Rahman、Zahir Hussain、山下量平、岡本蓉子、宇山 徹、竹之内康広、田中 保、岡本安雄、徳村 彰、上田夏生
    • 学会等名
      第28回創薬・薬理フォーラム岡山
  • [備考] 川崎医科大学 教室紹介 薬理学教室

    • URL

      https://www.kawasaki-m.ac.jp/med/study/info.php?id=205

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公開日: 2018-12-17  

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