研究課題/領域番号 |
17K01857
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
金子 雪子 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (00381038)
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研究分担者 |
石川 智久 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (10201914)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膵β細胞 / インスリン分泌 / 糖尿病 / ジアシルグリセロール / ジアシルグリセロールキナーゼ |
研究実績の概要 |
本研究では、2型糖尿病発症過程におけるインスリン分泌異常への type I DGK の関与を明らかにすることを目的として検討を進めている。これまでの検討において、膵β細胞では type I DGK が細胞内 DAG 量調節を介してインスリン分泌に寄与することを明らかにしている。また、膵β細胞株 MIN6 細胞を用いた検討において、type I DGK 抑制による細胞内 DAG 蓄積は、その程度により促進と抑制という2面性の作用を示すという知見や、2型糖尿病モデルマウスにおいて、膵島内 type I DGK 発現量が減少しているという知見を得ていることから2型糖尿病発症にβ細胞における type I DGK の機能障害が関与していると考えている。そこで、今年度は type I DGK 欠損マウスを用いて血糖調節機能および膵β細胞機能の解析について検討を行った。その結果、DGKα欠損マウスにおいて、10週齢で耐糖能の悪化が認められた。一方、DGKγ欠損マウスでは、20週齢までは耐糖能の悪化は認められず、30週齢の高週齢で耐糖能の悪化が認められた。一方でインスリン抵抗性に関しては、どちらの DGK 欠損マウスも影響は認められなかった。C57BL/6 マウス膵島においては DGKαが DGKγより高発現しているという知見からも、血糖調節の維持には DGKαが主に関わっており、週齢を経るとともに DGKγによる DAG 代謝の寄与も増加してくることが示唆された。現在、DGK 欠損マウスの膵島形態および細胞内 Ca2+ 濃度動態、インスリン分泌測定などの膵β細胞機能について解析を進めており、type I DGK の発現・活性と2型糖尿病発症との相関およびその分子機構を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、2017 年度は DGK 欠損マウスの発現形質解析に加え MIN6 細胞あるいはマウス単離β細胞を用いて、VDCC 活性および細胞内 Ca2+ 濃度に対する DGK 欠損や DGK 阻害薬、DAG アナログの影響について解析することにより、DAG 蓄積が細胞内 Ca2+ 動態に与える影響およびその機序について明らかにする予定であった。DGK 欠損マウスより単離分散した膵β細胞における細胞内 Ca2+ 動態変化の解析については現在検討を進めており、コントロール群と比較して、その Ca2+ 動態に変化がみられることを確認している。一方、パッチクランプ法を用いた電気生理学的検討については、昨年度測定装置の設置場所の空調設備の故障により、測定が不能となったため VDCC 活性への影響についての解析が遅れている。しかし、DGK 欠損マウスを用いた膵島の形態観察やβ細胞量の解析については、新たな蛍光顕微鏡設備の導入により順調に進んでいるため、おおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画にしたがい、引き続き研究を遂行していく。当初、DGKα欠損マウスの繁殖が予想通りに進まずマウスの数の確保に難航したが、昨年度後半から、徐々に繁殖数が増加してきたため、今後は DGKα欠損マウスの膵β細胞機能解析の遂行に注力していく。また、DGKα、γダブル欠損マウスの作製や、DGK 欠損マウスを用いた糖尿病モデルの作製にも着手する予定であり、DGK が膵β細胞機能におよぼす影響についてより詳細な解析を進め、DGK 機能障害による膵β細胞機能変化による糖尿病の発症、進展の可能性について検討していく予定である。さらに、電気生理学的検討を進めることで、膵β細胞内 DAG シグナリングのチャネル活性への影響についても詳細に解析を進めていく予定である。
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