脳磁図法を用いて食意欲の促進・抑制バランスの破綻機序を解明し、その修復法として新規の脳科学的生活指導法の提案を目指して研究を行ってきた。 令和4年度は前年度より取り組んでいた、意識に上る食刺激と意識に上らない食刺激の双方を用いた脳磁図研究の成果を論文公表することができた。具体的には、質問紙により評価した各参加者の食行動の傾向(情動性摂食及び認知的摂食抑制)は意識に上る食刺激により引き起こされる脳活動あるいは、意識に上らない食刺激により引き起こされる脳活動のそれぞれ単独ではなく、両者のある種の線型結合に強い相関を示すことを明らかにした。 前述の成果は、食品に対する本人の自覚を伴う情報処理だけでなく、食品に対する本人の自覚を伴わない情報処理が食行動に影響を与えていることを示唆しており、有効性の高い食事指導方法を開発する上でも意義深い成果であると考えられる。その一方で、実験に用いる食品画像セットの内容を工夫することや、食品画像の無意識的提示手法として採用したバックワードマスキング法において不可視閾値をより精密にコントロールする手法を導入することにより、意識的および無意識的な食関連脳内機構をより詳細に検討できる可能性を見出すことができたため、今年度は高精度な実験を可能にする新規食品画像課題を確立する作業を進めた。その中には前年度より準備を開始していた、蕎麦やたこ焼きといった我が国独特の食品をも含めた、エネルギー量、栄養素などを明確化した食品画像セットを用意する作業も含まれており、新規食品画像撮影環境の構築を行った。
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