研究課題/領域番号 |
17K01864
|
研究機関 | 北翔大学 |
研究代表者 |
小坂井 留美 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 教授 (20393168)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ライフヒストリー / 幼少期 / 家庭環境 / テキストマイニング / 高年齢者 |
研究実績の概要 |
本研究は,北海道の在宅高年齢者を対象に行うライフヒストリー調査,及びこれを基にした疫学的検証から,幼少期の家庭環境と高齢期の心身の健康との関連を明らかにすることを目的としている.今年度は,蓄積された高齢者のインタビューデータを再分析することにより,高齢男性の幼年期の家庭環境に関する発言特性について成果を得た. 1.子ども時代の家庭環境に関する語りの特性-テキスト定量分析からの検討:全対象者から60-89歳までの男性高齢者18名を分析焦点者とし60・70・80歳代の3群に分けて分析した結果,子ども時代の家庭環境に関わるキーワードの発言頻度はいずれの群も「家族」に分類される語の頻度が高かった.幼少期の家庭環境に関わる6キーワードにおいて,ほぼ全ての用語で高齢になるほど発言頻度の高い傾向がみとめられた.男性の60代では仕事を継続している,退職後の期間が短い状況からライフヒストリーの中で成人期の影響が強く,70-80代では人生全体に占める幼少期の相対的な割合は少なくなるが,語りの量の増えることが示唆された. 2.子ども時代の困難な状況と身体活動・創作経験-定性的コーディングによる検討:異なる対象者で複数上げられた内容として,「(親や兄弟との)死別」,「(家族や自分の)病弱さ」,「貧困」,「手伝い」,「歩いての移動」,「名のない遊び」,「(道具や楽しみを)作る」が特徴付けられた.幼少期について家族との死別や貧困の状況が語られる一方,家の手伝いや徒歩による長距離の移動を身体の基礎作りとなった捉える発言や北海道特有の手作りスキーでの遊び,友人と流行遊びを作る経験が誇らしく語られた. 以上より,幼少期の語りは高齢群で多く,家族との関わりについての発言の多いことが示された.幼少期の困難な状況にあって「よく動く」,「作り出す」等の活動があり,現在までの影響として自覚されていることが示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に当たる今年度は,北海道A市在住の高齢者94名についてのライフヒストリーデータを再分析し,家庭・家族に関するストーリーの抽出,テキストマイニングによる関連用語の抽出することを計画した. 「幼少期の家庭環境」についての発言を抽出するために「思い出」,「昔」,「学校(小学校)」,「家族」,「家庭」,「炭鉱」のカテゴリ分類器を設定したが,キーワード抽出だけでも600語を越える抽出となった.語の多さは,テキスト化したインタビューデータにおいて言葉の揺らぎや同意でも様々な表現のあることに起因する.また,文脈により他人の話が語られるような場合も有り,単純な用語でも意味の確認にインタビュー全体のデータに戻る作業を繰り返す必要があった.このような分析作業に多大な時間を要したため,今年度の主な研究成果は男性のみの結果となった. しかし,これは申請時に想定しており,今年度の目的であった全対象者のデータについてのキーワード抽出は完了したため,研究の進捗としては概ね計画通りと評価した.
|
今後の研究の推進方策 |
申請時の計画から変更なく研究を進める.平成30年度は今年度抽出したキーワードを中心とした解析を進め,女性の検討結果をまとめる.ここまでの結果を踏まえて分析焦点者を選出する,協力依頼や現在の健康・生活状況確認を行うなど,追加インタビュー調査の準備を進める.
|