本研究は,生涯発達過程全体を通した幼少期の家庭環境の影響について理解を深めること,高齢期の心身の健康状態との関連を明らかにすることを目的に,北海道の在宅高齢者のライフヒストリーデータを検討し,これを基にした調査票を用いて966名を対象とした解析を行った.幼少期を特徴づける要素は,3因子として抽出され,「身体活動の楽しさ」,「家の手伝いの効用」,「親への敬意」と解釈できた.特に「親への敬意」の要素は,高齢期の主観的幸福感や自覚的健康度と関連し,親の働く姿を見たり手伝うことを通じて親への敬意を感じることは,高齢期に至る人生を支える要素となりうることが示唆された.
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