研究課題/領域番号 |
17K01874
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
宮下 政司 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 准教授 (40447248)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 身体活動 / 閉経後女性 / 断続性歩行 / 食事補充 / エネルギー負債 |
研究実績の概要 |
平成30年度に実施した研究は、研究規模上、2年弱をかけて実施する当初通りの計画に従い、データ採取を終えることができた。以下、研究成果の概要を示す。
【背景】総エネルギー消費量の同じ連続性および断続性の運動による食後中性脂肪の低減効果は同程度であると報告されている。また、若年者や中年者を対象とした先行研究において、連続性の運動後にエネルギー負債の状態を保つことで、より大きな食後中性脂肪の低減効果を得られることが報告されている。しかし、高齢者を対象に断続性の運動によるエネルギー負債が、食後中性脂肪に及ぼす影響について不明である。【目的】断続性の歩行によるエネルギー負債が閉経後女性の食後中性脂肪濃度に及ぼす影響について検討した。【方法】閉経後女性17名(年齢70.2±2.8歳、体格指数22.6±3.0 kg/m2、平均±標準偏差)を対象とし、安静試行、1回1.5分間の歩行運動を8時間中に計20回行う運動試行、運動試行と同様の歩行運動に加え歩行によって消費したエネルギーを朝食に補充する運動+補充試行の3試行を無作為化交差実験にて実施した。空腹時の採血(09:00)の直後に朝食を提供し、3時間後(12:00)に昼食を提供した。採血を09:00から2時間毎に計5回実施し、中性脂肪濃度を測定した。【結果】空腹時の中性脂肪濃度は3試行間で差を認めなかった。8時間中の中性脂肪濃度における総曲線下面積に3試行間で差が認められた(p=0.030)。その後の多重比較において、運動試行で安静試行と比較して13%低い値を示した(p=0.031)。運動+補充試行と安静試行との間に差は認められなかった。【結論】閉経後女性における断続性の歩行による食後中性脂肪の低減は、エネルギー負債を保持することで認められ、エネルギー出納を合わせた場合、その低減効果は消失した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画通りのペースで実験を進められ、データの採取について問題なく進めることができた。また、学会やシンポジウムの招待演者として得られたデータを平成31年度に発表予定をしており、外部へ研究成果を積極的に発信する。また国際学術誌に論文として投稿するため、現在、論文を執筆している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、平成29年度から30年度に実施した課題である急性の介入研究で得られている断続性の身体活動の増加と座位行動の中断が代謝関連指標の改善に有効である報告について、より長期的に検証を行うことで実用化を図る。
具体的には、閉経後女性30名を対象に3ヶ月間、日常生活の中での身体活動(運動・生活活動)を断続的に実施することで食後の中性脂肪値の上昇抑制が認められるか否かを検討する。対象者を断続性身体活動群15名と日常生活維持群15名に無作為に振り分け、断続性身体活動群では、「健康づくりための身体活動指針」に則した時間・強度として1日計10分以上の自由な活動強度で日常生活の中で身体活動を実施する。研究開始前、開始1ヶ月後、2ヶ月後及び3ヶ月後に実験室で実施する食事負荷試験にて食後の中性脂肪を主評価項目、副次評価項目としてその他の代謝関連指標を評価する。なお、開始2ヶ月後は空腹時採血のみ採取する。各食事負荷試験において、中性脂肪をはじめとする食後の代謝関連指標に影響する前日の身体活動や食事を統制する。身体活動量の増加に伴う他の時間への影響及び食欲への影響の両視点より、日常生活の中で応用可能な具体的な健康支援プログラムの開発のために、科学的知見の創出を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画通り、年度をまたぐ研究のため。
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