研究課題/領域番号 |
17K01875
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
安田 和弘 早稲田大学, 理工学術院総合研究所(理工学研究所), 次席研究員(研究院講師) (50633640)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脳卒中 / バイオフィードバック / 体性感覚 / 感覚補完・代行 / 多感覚統合 / 姿勢制御 / 歩行 |
研究実績の概要 |
本研究では,脳卒中片麻痺患者の感覚麻痺を振動BFで補完しつつ,歩行トレーニングを効率的に遂行するための機構を案出し,実行可能性を検証した.本装置は療法士側にも振動BFを付与することで教示や褒めを提示することで運動学習を促進できる仕様とした.BFによる感覚補完の影響を検証するために,脳卒中片麻痺患者6名を対象として,3週間(週3回×3週)装置を用いた歩行トレーニングを適応した.歩行パフォーマンスの評価指標として 10m 歩行速度,関節角度指標として麻痺側離地時および初期接地時の足関節角度,麻痺側の蹴り出しの評価指標として床反力計を用いて健足重複歩距離を測定した.各々の指標に関してPreプレテストとポストテストをWilcoxonの符号順位和検定を用いて比較した.結果として,踵接地時の背屈角度に変化を認めなかったが,蹴り出し時の底屈が増加し,健足重複歩距離が上昇した.この結果から,知覚支援 RT による運動学的変化を認めた.しかしながら,10m 歩行速度およびケイデンスついては向上を認めなかった.試験結果より本装置により脳卒中患者において歩行時の運動学的変化が見られたが,複合的歩行パフォーマンスの有意な向上には至らなかった. これまでの結果から,限界点の改善を目的として患者の歩容を保ったまま,ケイデンスを向上させるデバイスの試作機を開発した.患者に歩行リズムを振動フィードフォワード刺激により呈示し,そのリズムを患者が気づくことがないように短縮することで過剰な筋緊張を誘発することなくケイデンスを向上させるデバイスを構築した.今後は集団に対する振動BFの効果をコントロール群を含めて明らかにするとともに,リズム誘引デバイスの患者を対象とした検証を開始する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
回復期脳卒中片麻痺患者を対象として,臨床試験を遂行し,その効果と限界点を明らかにした.本研究から人工的な体性感覚BF付与が歩行運動学習を目的としたリハビリテーションへ導入可能であること,また運動学的変化を誘引可能であるが, 複合的歩行能力への効果は限定的であることを明らかにすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
30年度の実験から,体性感覚BFが脳卒中片麻痺患者の歩行障害に一部有効であることがわかった.実験効果には複合的歩行能力への効果に制限を認めたため,この結果を受けてシステム使用に関して打開策の検討を行う.さらに今回案出した歩行用システムの被験者数を追加した後,実証試験の結論を導き出す.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画自体は計画通りに進捗しているが,当初計画と異なり,研究を実施する対象者への謝金がボランティアとして実施したため不要となった.また,システム変更が不必要となり,ハードウェア改変の支出が不要となった. 繰り越し予算に関しては,成果報告に関わる論文投稿費用に充当する予定である.
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