研究課題
平成30年度は血中miRNAに注目し、(1)糖尿病とその合併症に関わる種々の病態を迅速・高感度・低侵襲で診断できるmiRNAマーカーの開発と治療応用を行った。並行して、(2)ゼブラフィッシュを用いて飼育条件や動脈硬化の評価法の確立をめざした。平成30年度は平成29年度に引き続き、(1)として、以下の(a)及び(b)を行った。(a)インフォームドコンセントの得られた被験者の追加を行った。追加した被験者について、①血液及び尿の生化学検査により、インスリン分泌能を推測し分類した。さらに、②糖尿病性網膜症検査、糖尿病性腎症検査及び糖尿病性神経障害検査により糖尿病の合併症について病態を評価した。そして、計15名の被験者を、「インスリン抵抗性であるが、糖尿病でない」群と「糖尿病であるが、合併症の併発はみられない」群と「糖尿病であり合併症も併発している」群の3群に各群5名ずつ分類した。各被験者について採血を行い、血清を分離して(b)のmiRNA精製に用いた。(b)(a)で得られた血清から、血清中の全分泌型miRNAを精製した。定量的RT-PCRの条件決定済みのインスリン抵抗性特異的に発現上昇しかつ発現絶対量の多い9種類のmiRNAについて、(a)の15名の被験者血清中の発現量を定量中である。これと並行して、平成30年度は、(2)として、以下を行った。ゼブラフィッシュ野生型に高脂質食を摂取させ、動脈硬化を発症していると考えられる肥満モデルを作出した。インドシアニングリーンをこのモデルの背側大動脈に注入して血管造影を行った結果、高脂質食摂取群では、普通食摂取群に比べ、動脈硬化巣と考えられる特定部位が高S/N比で検出された。さらにこれらの部位は、血管の動画造影により、10~20μm程度の蛍光として散在性に観察され、ゼブラフィッシュの動脈硬化過程の高精細なリアルタイムイメージングが可能となった。
2: おおむね順調に進展している
糖尿病とその合併症に関わる種々の病態を迅速・高感度・低侵襲で診断できるmiRNAマーカーの開発に向け、平成30年度は平成29年度にひきつづき、「2型糖尿病患者の病態と分泌型miRNA発現との相関解析による診断用miRNAマーカーの絞込と最適化」と「診断用miRNAマーカーに対する阻害分子等設計とエクソソームデリバリーによる病態改善効果の検証」を行うため、主に次の3点を重点項目として研究を行った。①被験者数を増やすため、インフォームドコンセントを得たうえで、インスリン抵抗性のみで糖尿病を発症していない被験者と様々な糖尿病の進行ステージにある被験者にさらに本研究に参画いただき、生化学的・生理学的検査データからその分類をすること、②既に平成29年度に定量的RT-PCRの条件決定済みであったインスリン抵抗性特異的に血中発現量が増加するmiRNA9種類について、①の被験者血清中での発現量を定量すること、③ゼブラフィッシュを用いたインスリン分泌能と動脈硬化の改善効果検証を行うためのシステム構築を行うこと。①については、平成30年度は、インスリン抵抗性のみで糖尿病を発症していない被験者と進行ステージが初期の被験者に本研究に参画いただくことができ、被験者数が大幅に増加した。今後、健常者の被験者数を増やす必要がある。②については、①の被験者血清中の全分泌型miRNAの精製を行い、上述の9種類のmiRNAについて、定量的RT-PCRによる発現量定量を行っている。③については、ゼブラフィッシュ飼育条件やインドシアニングリーンを用いた動脈硬化の評価法が確立できた。従って、平成30年度は、被験者数はほぼ目標に達し、健常者の被験者数が少ないものの、おおむね順調に研究が進展していると考えられた。
平成30年度の課題は、「健常者、インスリン抵抗性であるが糖尿病でない被験者、様々な糖尿病進行ステージにある被験者に本研究に参画いただき、生化学的・生理学的検査データからその分類をする」という重点項目について、健常者の被験者数が少なく、規定数に達しなかったことである。従って、平成31年度は、インフォームドコンセントに基づき、本研究に参画いただけるよう、健常者に対して引き続き依頼を行っていく。被験者数確保と合わせて、より少ない血液から高感度でmiRNA定量ができるRT-PCR条件を検討するとともに、発現量変化が糖尿病とその合併症の病態と高い相関性をもつmiRNAを選抜して、標的遺伝子を予測する。予測された遺伝子群に対して、機能別分類(GO解析)を行い、情報を統合して、診断用miRNAマーカーを決定する。一方、平成30年度は、「ゼブラフィッシュを用いたインスリン分泌能と動脈硬化の改善効果検証」のためのゼブラフィッシュ飼育条件やインドシアニングリーンを用いた動脈硬化の評価法が確立できたので、平成31年度は、発現量変化が糖尿病とその合併症の病態と高い相関性をもつmiRNAまたは、その阻害分子をゼブラフィッシュに導入して、動脈硬化への影響を評価する。
糖尿病とその合併症に関わる種々の病態を迅速・高感度・低侵襲で診断できるmiRNAマーカーの開発に向け、平成30年度は、インスリン抵抗性のみで糖尿病を発症していない被験者と進行ステージが初期の被験者に本研究に参画いただくことができ、被験者数が大幅に増加した。また、こうした被験者血清中の全分泌型miRNAの精製を行い、9種類のmiRNAについて、定量的RT-PCRによる発現量定量を行ってきた。さらに、ゼブラフィッシュ飼育条件やインドシアニングリーンを用いた動脈硬化の評価法が確立できた。従って、平成30年度は、被験者数はほぼ目標に達し、健常者の被験者数が少ないものの、おおむね順調に研究が進展していると考えられ、当初計上額より少ない額で研究遂行が可能であった。しかしながら平成31年度は、被験者数確保と合わせて、より少ない血液から高感度でmiRNA定量ができるRT-PCR条件を検討するとともに、インスリン抵抗性特異的に発現変動するmiRNAのうち、残り40種類のmiRNAを含め、発現量変化が糖尿病とその合併症の病態と高い相関性をもつmiRNAを選抜する必要があり、よりハイスループットなmiRNA精製と定量的RT-PCRシステムが必須となった。従って平成31年度は、チップやプレート等をデッキ上に自由に配置し分注作業を自由にデザインできる自動分注ロボットシステムを導入し、網羅的な解析を推進する。
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