研究課題/領域番号 |
17K01877
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
市野 直浩 藤田医科大学, 保健学研究科, 教授 (50278280)
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研究分担者 |
鈴木 康司 藤田医科大学, 保健学研究科, 教授 (60288470)
山田 宏哉 藤田医科大学, 医学部, 講師 (80610352)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / バイオマーカー / 超音波検査 / Stiffness parameterβ / 内臓脂肪蓄積 / DNAメチル化 |
研究実績の概要 |
我が国では「先制医療」という新しい医療のパラダイムシフトが期待されている。先制医療実現のためには、発症前に発症予測・診断するためのバイオマーカーの探索が必須である。本研究の目的は、先制医療のための動脈硬化バイオマーカーの開発である。我々は、動脈硬化の上流にある内臓脂肪蓄積と脂質代謝に着目し、それに伴うDNAメチル化などのエピジェネティックな変化を受けた遺伝子を明らかにし、その遺伝子と動脈硬化との関連を検討し、粥状硬化動脈硬化を発症前期に高い精度で予測・診断することができるバイオマーカーを開発することを目指している。 当初の研究計画では、毎年参加している某地域の住民検診に2017年度も参加し、その検診から得られるデータを基に本研究を進める予定であったが、DNAメチル化の遺伝子解析に関するインフォームドコンセントが不十分であることが判明した。我々は、本住民検診に2010年度より参加し超音波検査を継続的に行っていることから、本研究の遂行に支障を来さない超音波検査データを有し、かつDNAメチル化の遺伝子解析に関しても住民へのインフォームドコンセントが十分行われ、かつ遺伝子解析を行うのに必要量ストックされている2015年度住民検診の超音波検査データおよび試料を用いて研究を継続した。 超音波検査データに関しては、頸動脈超音波検査による内中膜複合体厚(IMT)を測定し、動脈硬化の発症・進展度を評価した。また、血管の硬さの指標であるStiffness parameterβについても解析を行った。さらに、腹部超音波検査では、内臓脂肪蓄積の表現型である脂肪肝の有無およびその程度の評価も実施した。DNAメチル化の遺伝子解析に関しては、内臓脂肪蓄積や生活習慣をすると示唆されている遺伝子、あるいは脂質代謝に関連すると報告されている遺伝子などのDNAメチル化解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2015年度某地域の住民検診約500名分の以下の超音波画像解析を進めた。①内中膜複合体厚(IMT):IMTの客観的評価となるmean IMTの計測 ②Stiffness parameterβ:「血管の硬さ」を定量的に評価する ③プラークの有無および観察範囲内における個数および性状 ④内臓脂肪蓄積量:内臓脂肪蓄積の表現型である脂肪肝の有無およびその程度の評価。これらの解析はほぼ終了し、総合的・統計学的にデータ解析するためのデータベースへの入力もほぼ終えた。 また、内臓脂肪蓄積や生活習慣を反映すると示唆されている遺伝子、さらに内臓脂肪や動脈硬化と密接に関連する脂質代謝関連の遺伝子の解析を実施した。具体的には、LINE-1、LPL、CETP、ABCA-1、HIA-1などである。これらの遺伝子のN項目に絞り、パイロシークエンサーによるメチル化率の解析を行った。遺伝子群の解析は、研究の効率化を考慮し、まずは全検体数約500のうち1/3に当たる約170検体の解析を行い、その結果を踏まえ、その後は優先順位を設定し順次解析を進めている。現時点の進捗状況としては、LINE-1とLPL遺伝子に関してはほぼ終了、CETP遺伝子は約500検体中386検体、ABCA-1は336検体、HIA-1 は171検体である。なお、解析結果は順次、データベースに入力した。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度の超音波検査における画像解析は終了し、データベースへの入力も終えた。DNAメチル化の遺伝子解析も進んでおり、現在はHIA-1遺伝子の未解析分の解析を進めている最中である。なお、HIA-1遺伝子の解析を終えた時点で遺伝子の解析は終了する予定である。また、HIA-1遺伝子の解析が終了次第、解析結果をデータベースに入力し、データベースを完成させる予定である。 その後は、完成したデータベースを基にして、データマイニングや頻出パターン抽出などの統計学的な解析手法を用いることにより、内臓脂肪蓄積および脂質代謝に関連する遺伝子のDNAメチル化レベルと内臓脂肪蓄積との関係、さらに動脈硬化との関連を検討し、動脈硬化のバイオマーカーに成り得る遺伝子の検索を行う。そして、先制医療の実現を可能とする粥状動脈硬化を発症前期に高精度で予測・診断することができるバイオマーカーを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、今年度中にDNAメチル化解析が全て終了する予定であったが、一部の解析が未だ終了しておらず、そのためである。 次年度の研究費の使用計画は、未だ解析が終了していないDNAメチル化解析のための試薬購入、また試料を保存するための超低温フリーザー購入(分担購入)、統計解析ソフトウェア「JMP」の購入を行う予定である。また、当初の計画にある論文校正や論文別刷代にも使用する予定である。
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