研究課題
本研究の目的は、先制医療のための動脈硬化バイオマーカーの開発である。我々は、動脈硬化の上流にある内臓脂肪蓄積と脂質代謝に着目し、それに伴うDNAメチル化などのエピジェネティックな変化を受けた遺伝子を明らかにし、その遺伝子と動脈硬化との関連を検討し、粥状硬化動脈硬化を発症前期に高い精度で予測・診断することができるバイオマーカーを開発することを目指している。研究基盤としている某地域の2015年度住民検診(n=486)の超音波検査データから内臓脂肪蓄積の表現型である脂肪肝の有無、内臓脂肪、皮下脂肪を解析し、また体脂肪率やBMIも求めた。さらに頸動脈超音波検査によりプラークの有無、内中膜複合体厚(IMT)、血管の硬さの指標であるStiffness parameterβの解析も行った。DNAメチル化の遺伝子解析に関しては、内臓脂肪蓄積や生活習慣を反映すると示唆されている遺伝子、さらに内臓脂肪や動脈硬化と密接に関連する脂質代謝関連の遺伝子の解析を実施した。具体的には、LINE-1、LPL、CETP、ABCA1、TXNIP、SOCS、HIF3Aである。これらの遺伝子のN項目に絞り、パイロシークエンサーによるメチル化率の解析を行った。全ての解析結果をデータベースに入力し、統計学的検討を行った。その結果、TXNIPとHIF3Aで内臓脂肪と体脂肪率において有意な関係が認められ、さらに、この2つの遺伝子はプラーク有無あるいはIMTとの間にも有意な関係が認められた。しかしながら、これら遺伝子は年齢と性別の影響も受けることが明らかとなり、年齢と性別で補正することによりその明らかな関係性は認められなくなった。DNAメチル化に関しては様々な環境因子が関与することから、更なる検討が必要であると思われた。
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Scientific Reports
巻: 9 ページ: 18856
10.1038/s41598-019-55076-z