研究課題/領域番号 |
17K01879
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研究機関 | 京都橘大学 |
研究代表者 |
崎田 正博 京都橘大学, 健康科学部, 教授 (10582190)
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研究分担者 |
村上 慎一郎 姫路獨協大学, 医療保健学部, 教授 (30454763)
藤野 英己 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (20278998)
熊谷 秋三 九州大学, 基幹教育院, 教授 (80145193)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 加齢 / 老化 / 末梢神経 / 髄鞘 / 毛細血管 |
研究実績の概要 |
近年、高齢者のバランス能力低下と末梢神経の退行に関連性のあることが報告されている。そこで、本研究は加齢による末梢神経萎縮に注目した。加齢による末梢神経萎縮は、神経線維の中でも有髄線維の髄鞘で著明であり、髄鞘と神経周囲毛細血管との相互作用悪化で生じる。また、低強度運動により、これら相互作用の改善が明らかにされている。しかし、高齢者の中には運動の奨励が困難な場合も多い。そこで、本研究の目的は加齢による末梢神経と毛細血管退行に対して、極超短波照射による熱ストレス刺激を与え、細胞保護因子の発現・誘導促進による退行予防の有用性を検証し、運動介入以外の新たな予防方法を開発する。 研究代表者は、運動以外の方法(深部熱(極超短波)刺激)で末梢神経と毛細血管退行の予防・改善効果を検証する必要性があると考え、本研究の着想に至った。本研究の目的は以下の2つである。研究 1:加齢と身体不活動に伴う脛骨神経・毛細血管の生存・分化因子と退行因子の両面の均衡バランス動態を縦断的に検証し、退行現象の全体像を明らかにする。研究 2:高齢期脛骨神経に極超短波を照射し、熱耐性タンパク質(熱ショックタンパク質:HSPs)の役割を利用して脛骨神経と毛細血管双方の細胞保護(酸化・低酸素ストレスの耐性) と相互作用を促進させ、脛骨神経と毛細血管の構造維持・改善の効果を検証することである。 当該年度は、前年度から飼育を開始したラットを高齢化させるための継続飼育が主体であり、また、成年期(30週齢)および中年期(60週齢)の末梢神経組織検体の採取および組織学的手法によるSudan Black B染色(髄鞘の可視化)、ALP染色(血管数の確認)、SDH染色(ミトコンドリアの酸化酵素活性)および毛細血管の3次元構築の確認(血管内腔蛍光)を実施し、成年期から中年期までの退行を光顕像および蛍光像より解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成年期(30週齢)および中年期(60週齢)ラットの後肢末梢神経組織を採取し、ズダンブラックB染色(有髄線維、ミエリン鞘厚の確認)・ALP 染色(血管数の確認)・SDH 染色(ミトコンドリアの活性(コハク酸脱水素酵素の活性)を確認)・ 毛細血管3 次元構築の確認(共焦点レーザー顕微鏡観察)を実施した。 当初の予定では、免疫組織化学・免疫蛍光染色(熱ショックタンパク、神経栄養因子、血管内増殖因子の発現部位同定)まで実施することとしていたが、最終年度にも抗体を多く使用すること、また長期保存により失活する可能性を回避し最終年度に予定している生化学・分子生物学的解析時に同時に行うこととした。そのため、予期せぬ問題が生じたことによる未実施ではなく、最良の結果を導くための未実施である。 成年期と中年期の末梢神経における組織学的解析では、有髄線維および毛細血管の有意な中年期の加齢性退行は確認されず、構造的に保続されていることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として、予定通り90週齢の高齢ラットを作成し、当該年度と同様の組織学的解析を実施する。また、90週齢に達した段階で無作為に3 群(極超短波照射群、低強度運動群、身体不活動群)に割り付け、極超短波照射が低強度運動と同等もしくはそれ以上の抗退行作用があるか生化学・分子生物学的に検討する。 解析の具体的なバイオマーカーは、細胞保護因子(HSP27, HSP70, HSP90)、神経栄養因子(BDNF; 髄鞘形成のリガンド)、神経栄養因子受容体(TrkB)、シュワン細胞分化抑制受容体(Sp35)、髄鞘形成マーカー(MBP)、サイトカイン(IL-6, TNF-α; 免疫細胞の不活性確認)、血管内皮増殖因子(VEGF; 血管新生のリガンド)、Mn, Fe, Zn-SOD(ミトコンドリア、細胞質酸化ストレス抑制因子)、末梢神経内アポトーシスの活性(カスパーゼ-3活性)である。これはバイオマーカーの発現量をウェスタンブロット法およびELISA法により実施する。さらに、血中ヒドロペルオキシド(血中酸化物質)の濃度測定および末梢神経内アポトーシス細胞の濃度検定(TUNEL法)により測定し、末梢神経や毛細血管の抗加齢促進因子と加齢促進因子の両面から解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、概ね研究計画は順調に進んでいる。当初の計画で当該年度に実施予定であった解析の一部を次年度以降に移行するため、その解析分の使用額が生じた。研究の遂行には何ら問題はない。
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