研究課題/領域番号 |
17K01881
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
丹羽 淳子 近畿大学, 医学部, 講師 (60122082)
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研究分担者 |
西中 崇 近畿大学, 医学部, 助教 (50786184)
高橋 英夫 近畿大学, 医学部, 教授 (60335627)
小堀 宅郎 近畿大学, 医学部, 助教 (60734697) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 血管性ニッチ / CD34+骨髄細胞 / 脳卒中 / 運動介入 / FGF2 / regeneration / 血管新生 / 臓器連関 |
研究実績の概要 |
骨髄細胞は血球細胞のみならず血管系の恒常性維持と傷害修復に関与する組織幹細胞を有する。骨髄微小環境についてSHRSPと健常群との比較、発症前後および運動介入による変化を調べ、脳と骨髄の臓器連関の観点から検討した。 骨髄は低酸素環境に保たれ、一生涯の血球と血管系幹細胞・前駆細胞を維持すると考えられている。しかし大量の血球が必要な状況下では、主にジヌソイドが拡張して酸素濃度を上げ、前駆細胞の増殖分化の促進や髄外造血の亢進が起こり需要に対応することが報告されている。SHRSPのジヌソイド血管系を若齢期から脳卒中発症前後の期間、免疫染色して測定した。非運動SHRSPの骨髄微小血管系は健常ラットに比し乏しく、一方、運動介入により微小血管網が増加した。また脳卒中発症は放射線処置などと同様に微小血管を拡張させ、骨髄全体の血管面積が一過性に増加した。骨髄微小環境(ニッチ細胞数とニッチ因子産生増加)の拡大は、CD73ジヌソイド内皮細胞とSDF-1+/ Leptin receptor+の間葉系細胞、SDF-1とSCFの産生を増加させた。また運動SHRSPでは発症後に特にFGF-2とVEGF産生が著明に増加した。CD34+造血幹細胞/前駆細胞の増加とCXCR4発現が増加し、血管系幹細胞の活性化が示唆された。 非運動SHRSPにDiprotin AとSDF-1組換え蛋白を発症1日後から4日間投与しても血漿SCFと骨髄細胞FGF-2産生量は増加した。骨髄微小血管網が拡大し、ジヌソイド内皮細胞の微細構造が運動群同様に良好に保持された。FGF2+、VEGF+間葉系細胞、CD34+細胞も増加した。側脳室幹細胞域と脳病変部では、運動介入と同様にCD34+血管新生とともに神経新生が亢進した。運動介入は血管性ニッチの恒常性維持と傷害部修復に関与し、これにはSDF-1とFGF-2の産生増加の重要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳卒中発症前後のニッチ細胞とニッチ因子の変化を明らかにできた。また日常の運動習慣や心血管系疾患発症後のリハビリテーションの有効性の一つのメカニズムを示唆する実験的知見を得ることができた。傷害修復時の骨髄血管性ニッチの構築維持には、SDF-1やSCFに加えてFGF-2の重要性が示唆された。 骨髄ニッチ因子としての重要性が多くの報告から明らかにされているSDF-1を蛋白分解酵素の阻害薬やリコンビナント蛋白を発症後に投与して外的に増加させた場合も運動介入により内的な刺激により生理的に増加させた場合においても、骨髄血管性ニッチ環境を変化させることができた。これらは骨髄微小血管の内皮細胞とその周囲の間葉系細胞のニッチ細胞の増加、またニッチ細胞から産生されるSDF-1,SCF, さらにFGF-2やVEGFなどの増殖因子を増加させた。その結果、CD34+血管系幹細胞/前駆細胞の数を増やし、細胞遊走の(ケモカイン受容体発現増加)活性化をもたらすことを示唆する知見が得られた。 脳卒中時の骨髄微小血管系の検討は老化モデル動物や放射線による骨髄障害から推測されているが、実験的知見は明らかにされていないので、病態時の骨髄血管や微小環境の変化の知見を得られたこと、また運動介入の骨髄細胞に対する有効性の知見が得られたことは有意義である。
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今後の研究の推進方策 |
傷害時の血管性ニッチの構築維持にFGF-2の関与が示唆されたので、阻害薬を投与して確認する。 骨髄微小血管系の構造的、組織学的検討の知見をうけて、標識赤血球を投与して実際の骨髄微小血管の血流量を測定する。またレーザードップラー血流計によって脳血流量を測定し、脳障害および回復との関係を調べる。 各実験群から骨髄からCD34+細胞と間葉系細胞をソーターを使って分画採取して混合培養し、血管新生の活性を比較する。混合培養の細胞を標識して皮下に移植し、皮下組織の血管系増殖の変化を検討する。移植された細胞のretentionの時間経過を測定して、細胞の生存効果を評価する。 骨髄ジヌソイド内皮細胞局所のマイクロダイセクションを行い、血管内皮細胞の透過性に関係する因子の遺伝子発現解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
SHRSPの供給が予定通りに進まず、FGF阻害薬の投与実験が行えなかったため。 次年度に実施予定である。
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