研究課題/領域番号 |
17K01883
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
崎山 晴彦 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (30508958)
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研究分担者 |
鈴木 敬一郎 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70221322)
江口 裕伸 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (60351798)
吉原 大作 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (00567266)
藤原 範子 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10368532)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ChREBP / 肥満 / 転写因子 / 褐色脂肪組織 / UCP1 / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
本研究課題では、糖・脂質代謝に関与する転写因子ChREBPの欠損(KO)マウスが示す抗肥満作用のメカニズムの解明を行い、メタボリックシンドロームの治療と予防に役立てようとするものである。 ChREBP KOマウスは、われわれの先行研究により、ショ糖食を与えても体重増加をそれほど認めないことや血糖値が上昇しないことを見出している。一般的に体重増加を認めない原因として、小腸からの糖分・脂肪分の吸収抑制や各組織での脂肪酸合成能および脂肪組織などでの脂肪の分解能の促進などが挙げられる。われわれは、ChREBPが糖・脂質代謝に関係する転写因子であることから、まずは脂肪組織での脂肪酸合成能や分解能に着目した。 特にエネルギー消費の自立的調節に関与するタンパク質UCP1に着目し、ChREBPがUCP1発現量や活性化に及ぼす影響を検討することを主な目的とした。 野生型マウスおよびChREBP KOマウスの白色、褐色脂肪組織において脂肪酸合成に関与する酵素群の発現量を定量的PCR法で確認したところ、KOマウスで顕著に低下していた。また、UCP1の発現量をウエスタンブロットで検討した結果、KOマウスで増加していることが分かった。 UCP1は脂肪燃焼だけではなく、ミトコンドリアにおいて脱共役タンパクとしての機能も併せ持つ。よってミトコンドリア内電子伝達系複合体の発現量をウエスタンブロットで検討したところ、KOマウスで亢進していることが分かった。さらに、マウス脂肪組織より単離した初代培養細胞を用いてATP合成量を確認すると、KOマウスより単離された細胞ではATP合成の低下を認めた。以上のことから、ChREBP KOマウスの褐色脂肪組織では電子伝達系複合体が何らかの影響により発現量が増加し、UCP1により脱共役されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の予定として、ChREBP KOマウスの脂肪組織においてUCP1タンパク質の解析以外にミトコンドリアの機能を評価することを目指していた。結果として、電子伝達系の発現量の違いやそれに伴うATP合成能の差などのデータを得ることができた。 よって、おおむね順調にしていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定として、UCP1の発現調節に直接ChREBPが関与しているのかどうかを検討する。そのために、UCP1のプロモーター領域の解析を行う。レポータージーンアッセイを培養細胞の系で行う。 次に、電子伝達系複合体のタンパク発現量が増加した原因を探求する。そのために、細胞内を酸化ストレスの度合いなどを検討する。培養細胞や組織においてどの程度の活性酸素種が生じているのかを測定する。 また、ミトコンドリアのかたちにも変化が生じている可能性があるので、電子顕微鏡を使用して形態学的に変化が認められるかどうかを観察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 研究は順調に進展しているが、予定していた使用額を使い切れなかった。予想以上に手技がうまくいった実験系があり、経費を削減できた。次年度に繰り越すことを決定した。 (使用計画) おおむね研究は計画通りに進んでいるので、申請した使用計画に従って実験を進めていく予定である。おもな使用として、動物の管理や維持・購入、遺伝子工学関連試薬、培養細胞関連試薬、プラスチック類の消耗品などの購入である。
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