【目的】老齢期の筋力低下の要因として神経筋接合部(NMJ)の形態変化が報告されている.そして老齢期に起こる筋機能低下予防には運動が効果的である.しかし,老齢期のトレーニングは発育期ほど効果を得られない.NMJにおける発育期のトレーニング効果が老齢期まで持続するのであれば,その効果はどれだけ残るのか,どの要因に大きく関与するのか.本研究では発育期の運動が老齢期の骨格筋へ及ぼす影響をNMJ形態,神経支配から明らかにした. 【方法】実験動物はFischer344系雌ラットを用いた.若齢期トレーニング群(YT),若齢期トレーニング+通常飼育群(YC),若齢期トレーニング+加齢期トレーニング群をもうけた(T).加えて1年齢のコントロール群を設けた(1Y).被験筋はヒラメ筋(SOL)長指伸筋(EDL)とした. 若齢期トレーニングは,小動物用トレッドミルを用いた間欠走トレーニングを行った.加齢期トレーニングは強制回転走行装置にて走トレーニングを行った. 飼育,実験終了後に筋発揮張力測定による神経支配比の推定,筋およびNMJ形態観察を行った.筋直径(FD),運動終板長(EL),運動終板面積(EA),神経終末面積(TA)の測定を行った. 【結果・考察】筋重量は老齢期トレーニング群が高い傾向を示した.筋張力と神経支配率は変化が認められなかった.神経支配率は全ての群で95%以上を示し,脱神経は起っていないことが推察される. NMJの機能の低下は認められなかった.疲労耐性はCONTに対してトレーニング群が優位な高値を示した.筋線維径は変化が認められなかった.NMJ形態は,T,AC群でEL,EL/FDが高値を示した.発育期の運動ではFD,加齢ではELへの影響が大きかった.筋およびNMJ形態へのトレーニング効果は,トレーニング時期や期間の違いによって影響を受ける要素が違うことが示唆された.
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