研究課題/領域番号 |
17K01886
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
石塚 俊晶 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 薬理学, 教授 (30399117)
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研究分担者 |
佐藤 泰司 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 薬理学, 准教授 (10505267)
野村 さやか 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 薬理学, 助教 (20791651)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インフラマソーム / ミクログリア / 神経前駆細胞 / LPS / TNF / 神経分化 |
研究実績の概要 |
昨年度の本研究は、メタボリックシンドロームの脂肪組織から過剰産生されるTNFが、マウス神経前駆細胞のインフラマソーム活性化を促し、それに伴い産生増加するIL-1betaやIL-18が神経前駆細胞の神経分化を阻害していることを明らかにした。一方、最近、リポポリサッカライド(LPS)をマウスの腹腔内に投与すると認知機能の低下がみられることが報告され、LPSの脳内炎症への関与が示唆されている。そこで、本年度は、マウス株化ミクログリア細胞およびマウスiPS細胞由来神経前駆細胞に対して、TNFに加えLPSの刺激を行い、インフラマソーム活性化と神経前駆細胞の増殖・分化に与える影響を検討した。TNFおよびLPSの刺激は、TNF単独刺激に比しミクログリアおよび神経前駆細胞の活性型caspase-1, IL-1beta, IL-18の発現増加をさらに促進させることが明らかになった。次に、MTTアッセイ法による神経前駆細胞の増殖活性を検討したところ、TNFおよびLPSの刺激は有意な増殖抑制作用を示した。また、レチノイン酸による神経細胞への分化に対しても、TNFおよびLPSの刺激は有意な抑制作用を示した。そこで、神経前駆細胞にインフラマソーム活性化阻害薬BAY11-7082を前添加すると、TNFおよびLPSの増殖抑制作用には有意な影響がみられなかったのに対して、神経細胞への分化抑制作用には有意な阻害がみられた。以上の結果より、TNFおよびLPSの刺激によりミクログリアおよび神経前駆細胞のインフラマソーム活性化がさらに亢進し神経前駆細胞の神経分化を低下させている可能性が示唆された。近年、歯周病や腸内細菌叢の乱れが認知症の危険因子として注目されている。体内のグラム陰性菌から産生されるLPSと脂肪組織から過剰産生されるTNFの複合刺激により、脳内炎症および神経新生障害を増悪する機序が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、上記の検討に加えて、C57BL6マウスに通常食あるいは高脂肪食を16週間与えた後、TNFおよびLPSを投与し、モーリス水迷路試験等による認知機能の評価や免疫組織染色や蛍光抗体染色、ウェスタンブロット法による摘出脳組織のインフラマソーム活性化や神経新生の評価を実施している状況である。まだ、各群の個体数が少ないため、統計的な比較検討ができない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
現在実施している「通常食あるいは高脂肪食で飼育したマウスへのTNFおよびLPS投与による認知機能や脳内炎症、神経新生への影響の比較検討実験」を加速し、個体数を増やして有意な影響がみられるかを急ぎ検討したい。さらに、メタボリックシンドロームの疾患モデルであるob/obマウスあるいはアルツハイマー型認知症モデルマウスに対しても、インフラマソーム活性化刺激であるTNFおよびLPSあるいはインフラマソーム活性化阻害薬BAY11-7082を投与し、認知機能や脳内炎症、神経新生への影響を比較検討することにより、メタボリックシンドロームでのミクログリアや神経前駆細胞でのインフラマソーム活性化が認知機能障害に至る機序を明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)H30年度は、C57BL6マウスに通常食あるいは高脂肪食で16週間飼育した後、TNFおよびLPSの投与を行い、モーリス水迷路試験による認知機能検査や蛍光抗体染色等による摘出脳組織での脳内炎症や神経新生の評価を行い、比較検討を実施する予定であった。しかし、動物実験施設の耐震性強化のための改修工事により、水迷路試験を実施する実験室が長期間使用できず、動物実験の開始が大幅に遅れたため、脳組織切片の作成や蛍光抗体染色、免疫組織染色、ウェスタンブロット解析に必要な試薬や消耗品の使用が当初計画より少なかったためと考えられる。 (使用計画)上記の「通常食あるいは高脂肪食で飼育したマウスへのTNFおよびLPS投与による認知機能や脳内炎症、神経新生への影響の比較検討実験」は現在順調に実施中であるが、実験のペースをさらに加速し急ぎ検討を終了させたい。また、H31年度に実施予定のメタボリックシンドロームの疾患モデルマウスあるいはアルツハイマー型認知症モデルマウスは現在、購入申請中である。納入され次第、インフラマソーム活性化薬あるいは活性化阻害薬の投与を行い、認知機能検査や脳組織解析を計画通りに実施する予定である。このため、H30年度の残額とH31年度の全額を使用する予定である。
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