研究課題/領域番号 |
17K01888
|
研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
藤田 泰典 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30515888)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 膜小胞 / 大腸菌 / 慢性炎症 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、グラム陰性細菌が放出する膜小胞Outer membrane vesicle (OMV)の生理的・病理的な役割の解明を目指し、大腸菌由来OMVの生体内への侵入経路、体内動態、標的組織を明らかにすることを目的としている。また、大腸菌由来OMVが高脂肪食摂取マウスや次世代型アルツハイマー病モデルマウスの病態の発症や進行に及ぼす影響を検討し、OMVの観点から、腸内細菌と慢性炎症・代謝性疾患・神経変性疾患との関連およびその分子機構について新知見を得る。平成30年度は大腸菌由来OMVの標的組織と体内動態の同定を試みた。大腸菌由来OMVまたはLPSを投与したマウスから各種臓器を採取し、抗LPS抗体による免疫組織染色を実施した。その結果、LPSを投与したマウスでは肝臓、腎臓、脾臓においてLPSが検出された。一方、OMVを投与したマウスでは肝臓において僅かながらLPS陽性細胞が観察された。また、LPSを投与したマウスでは免疫細胞由来の細胞外小胞が血液中で顕著に増加することを見出した。さらに、高脂肪食を投与したAPPノックインマウスの行動試験を実施した結果、高脂肪食摂取による認知機能への影響は認められなかった。また、野生型マウスと比較してAPPノックインマウスで認知機能の低下が観察されなかった。以上のことから、OMVは血流を介して肝臓に輸送される可能性が考えられた。今後、再現性実験を行う共に、OMVの標的細胞の同定を試みる。また、LPSと同様にOMVが血中の免疫細胞由来細胞外小胞を増加させるか検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、大腸菌由来OMVが血流を介して肝臓に輸送される可能性を見出した。また、LPSを投与したマウスでは免疫細胞由来細胞外小胞が血液中で増加することを発見した。さらに、高脂肪食投与がAPPノックインマウスの認知機能に影響を及ばさないことを確認した。したがって、総合的にはおおむね順調に進展しているものと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、①大腸菌由来OMVを測定する実験系の構築、②大腸菌由来OMVの標的組織と体内動態の同定、③大腸菌由来OMVと慢性炎症の関連解析、④大腸菌由来OMVがアルツハイマー病モデルマウスの病態に与える影響の検討を実施する予定であった。①のOMVを測定する実験系の構築に関しては、血中成分の影響を回避することができず、測定系の確立には至らなかった。また、④のアルツハイマー病モデルマウスの病態に与える影響の検討については、予想に反して8ヶ月齢のAPPノックインマウスで記憶学習能の低下が認められなかった。したがって、①と④の計画を中止し、②大腸菌由来OMVの標的組織と体内動態の同定、③大腸菌由来OMVと慢性炎症の関連解析に焦点を絞り研究を推進させる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
大腸菌由来OMVがアルツハイマー病モデルマウスの病態に与える影響の検討を計画していたが、APPノックインマウスで記憶学習能の低下が認められなかったため、計画を中止した。これにより、必要な実験動物や物品の購入が不要になり、次年度使用額が生じた。大腸菌由来OMVの標的組織と体内動態の同定、大腸菌由来OMVと慢性炎症の関連解析に必要な試薬・物品等の購入に使用する。
|