本研究では保育士が活用できる母親の育児行動に対する自律的動機づけを支えるアセスメントツールを開発することを目的とした。 乳幼児期の子どもをもつ母親を対象に質問紙調査を実施し、平成29年度(有効回答率329名)は「育児行動に対する基本的心理欲求充足尺度」と「育児行動に対する動機づけ尺度」(小児保健研究78,33-40)、平成30年度は「母親の育児行動尺度」(有効回答率250名)(小児保健研究80,164-171)を作成した。また、これらの尺度を用いて育児行動に対する自律的動機づけの構造を確認するために質問紙調査を実施した(有効回答率419名)。共分散構造分析によるパス解析の結果、3つの基本的心理欲求が充足すると内的調整は育児行動、育児に対する自己効力感を介して主観的幸福感を高めるプロセスが示された。 令和元年度、令和2年度は前年度までの基礎研究に基づき、保育士が活用できるアセスメントツールを作成し、介入研究の記録の特徴から内容妥当性を検討した。介入研究に先立ち、7名の保育士の自由記述を分析した結果、保護者支援を通して親子のニーズを充足するためには、保育士のアセスメント力や省察等、保育士の資質・能力の必要性が示唆された(埼玉大学紀要 教育学部69,311-322)。また、介入研究時の記録を分析した結果、自己決定理論に基づく支援の特徴が確認され、本アセスメントツールを活用することにより、母親は保育士との安定した関係性の中で、有能感、自律性の順で充足、促進され、自律的動機づけが形成されていくことが考えられた(埼玉大学紀要 教育学部70,83-99)。最終年度は本研究結果に基づき、『自己決定理論を活用した育児支援』のパンフレットを作成した。今後は保育現場や保育者養成校でのアセスメント教育に活用していく予定である。
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