本研究の目的は、子どもが育つ地域での在宅支援に関して、専門領域の異なる多職種間で子どもの状態像や背景要因、必要な支援を共通理解するためのツール作成である。 本研究において、在宅支援を継続された児とそれに対比する施設入所に至った児の臨床像を解析し、多軸評価でアセスメントを行った。評価項目は身体成育、家族機能、知的発達、認知行動特性、学習習熟状況、活動参加状況、対人関係・行動パターン(内在化と外在化)の8項目とした。ケース検討会議は児童相談所で159件、発達支援センターで78件、医療機関で109件実施した。加えて児童虐待対応委員会にて院内発生事例の情報共有と支援を協議した。県内の多職種で行われる子ども虐待防止医療ネットワーク研究会に参加し、被虐待事例と要支援児童を市町の担当部署につなげる意義と手法を検討した。当初は在宅支援児を分析対象としていたが、コロナ禍で調査に限界が生じた。そのため診療の継続が可能であった施設入所児に着眼した。対象児では家族機能、知的発達、認知行動特性に課題を持ち、家庭内暴力や虞犯行為の外在化行動が端緒となり施設入所に至った。入所以前の在宅時期において、家庭基盤の脆弱性が顕著であり、児の学習習熟困難や学校での活動参加への支援が乏しいまま不登校となり、抑うつや不安など内在化症状の把握がされなかった状況が明らかになった。施設入所後は、職員の関わりを通じて生活リズムの確立、身体化症状への丁寧な対応、言語化への支援が児らの適応状態の改善につながった。施設入所児らの臨床像の検討が、翻って有用な在宅支援の実現に寄与すると考えた。本研究を通して個々の事例の経過と共通点の把握を行ったが、定量的な評価から因子分析、カテゴリカル主成分分析には到達しなかった。本研究の問題点を把握し、引き続き多角的な視点をもとに効果的な支援、連携モデルの構築を目指した実装化を進める。
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