研究課題
本年度は静的な状態での姿勢する測定プログラムの開発をおこない、その測定精度を評価する実験を実施した。まず、赤外線TOF方式による深度センサ(キネクト)を用いてヒトの背中の3次元形状を計測するプログラムを作成した。そしてこの測定法を用いて実験室内で静止立位および座位にて背面よりカメラ撮影を実施した。姿勢の評価としては脊柱の湾曲を定量的に評価する方法を採用し、可視化アプリも作成した。計測プログラムについては垂直軸の設定やノイズを除去するための工夫を重ねた。また、得られた3次元点群データを用いて、数値処理にて自動的に脊柱の湾曲を定量的に評価できるよう、パラメータの設定をおこなった。この計測法法を用いてスポーツ選手等の身体特性を評価することで、投球障害等の運動器障害の発生との関連等を検討する素地ができた。また、運動器障害の発生状況等については、小中学生を対象とした運動機能評価や小中高の野球選手を対象とした運動器障害および運動機能・身体機能の評価を実施した。整形外科医や理学療法士と連携し、エコーを用いた運動器障害の評価や理学所見などメディカルチェック・フィジカルチェックをおこなった。これらのデータから、投球障害肩や投球障害肘など運動器障害を有する選手において特徴的な運動機能や身体機能を明らかにするための統計的評価をおこなった。以上のように、本研究課題である深度センサを用いた運動器障害の早期発見のためのスクリーニングテストの開発を実現するために必要となる、深度センサを用いた身体機能評価および運動器障害と身体機能・運動機能との関係に関する基礎的なデータを収集することができた。これらの知見を組み合わせ、縦断的な調査を継続することで、早期発見に繋がるスクリーニング法が開発できる可能性が高いと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
姿勢評価に関するプログラム開発が順調に進んだため、2018年度以降に実際のスポーツ選手を対象とした計測が可能となったため。
今年度については、まず、2017年度に作成した静的な姿勢での測定評価プログラムを用いて、X線撮影による脊柱湾曲との信頼性検証を実施する。さらに、動的な姿勢での評価が可能となるよう、被験者対して前後屈や左右傾屈、頭部体幹回旋、座位からの起き上がりなど姿勢を変化させる身体運動を実施させ、これらの姿勢変化を定量的に評価するプログラムを開発する。また、横断的調査および縦断的調査を通して、スクリーニングテストとしての妥当性の検証として、開発した計測方法を用いて、実際の小中高生を対象とした姿勢や動作の測定評価をおこなう。その際、整形外科医や理学療法士による理学所見メディカルチェック等実際の運動器障害のスクリーニングテストも実施し、それらとの関連を検討する。また、運動器障害の発生に関しては、体格や運動量などが交絡因子として影響することが考えられるため、これらの要因を調整するための調査法についても検討し、簡便に実施できる質問紙評価法などの開発をめざす。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Advances in Physical Education
巻: 7 ページ: 418-424
10.4236/ape.2017.74035