本年度は,前年度に作成した運動機能および身体機能の測定評価法を用いて,横断的調査及び縦断的調査を実施した.運動器障害の発生状況等については,小中学生を対象とした運動器障害の評価や理学所見などメディカルチェック,フィジカルチェックをおこなった.これらのデータから,投球障害肩や投球障害肘など運動器障害を有する選手において特徴的な運動機能や身体機能を明らかにするための統計的評価をおこなった.また,体幹部の可動性とスポーツ障害の関係についてジュニアアスリートを対象として障害との関係を検討した.さらに,スクリーニングテストとして開発した機能的動作テストとスポーツ障害の関係を検討した. 体幹後屈を評価する方法を用いて日常的に競技スポーツをおこなっている小中学生50名を対象としてメディカルチェックと身体機能評価(体幹後屈角度)の関係を検討した.その結果,胸部-腰部差を従属変数として,腰部または下腿・足部の障害の疑いの有無および性を被験者間因子とする2要因分散分析をおこなった結果,腰部では交互作用および性の主効果は有意でなく,障害の疑いで主効果が有意であり,疑いのある対象で胸部-腰部差が低い値であった.このことから,体幹の後屈と腰部のスポーツ障害との関連を示すことができた.さらに,機能的動作テストについては縦断的調査をおこない,縦断研究の結果から,しゃがみ込みが扁平足と,片脚フルスクワットおよび体幹屈曲筋力がアキレス腱炎と有意な関係がみられたため,機能的動作テストの結果からコンディショニング指導などで介入することで傷害発生リスクを減少できる可能性が示唆された.
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