研究課題
自己認識は、心の理論をはじめとした社会性認知の根幹をなす認知機能の一つである。そこで、本研究は、自己顔認知を中心として、自己認識の発達過程とその個人差を生じる認知神経科学的基盤を明らかにすることを目的に実施した。本研究で得られた主たる研究成果は、以下の通りである。成果①:社会的コミュニケーション・社会性相互社用の非定型性を主徴とする成人ASD者を対象に、自己と他者の視点の切り替え能力を、心理物理学計測と視線計測を併用して検証した。同課題では、Dot-Perspective課題と呼ばれる課題を用い、自己と他者の視点からの視覚世界の見え方の判断を行わせ、その判断速度を計測した。その結果、定型発達成人では、自己と他者の視点からの見え方が食い違っているときに、反応速度が遅くなったが、成人ASD者では、その傾向が減弱していた。また、課題遂行中に刺激の顔画像領域を観察する時間がASD者では短かった。この結果は、成人ASD者で暗黙的な他者の視点取得傾向が減弱している可能性を示唆している。成果②:若年成人を対象に、心理物理学実験とホルモン計測を併用し、自己顔に対する注意反応の個人差を生じる生物学的基盤を検証した。実験では、自己と他者の顔からの注意解法速度を測定した。さらに、唾液から男性ホルモンテストステロン濃度を計測した。その結果、女性では、テストステロン濃度が高いほど、自己顔からの注意解放のスピードが速くなることが明らかになった。これは、男性ホルモンレベルが高い女性は、自己顔に注意を向けにくい事を示唆している。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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