これまでの骨量獲得の因子に関する研究における対象は思春期または青年期であり、幼児期あるいは小学校低学年児童を対象とした研究は少なく、さらに研究手法も断面的なものにとどまっていた。本研究では、小学校低学年児童を対象として、超音波骨評価装置を用いた骨評価および体格などの計測を年に一度、継続して実施することに加え、食事の嗜好、睡眠や運動などの生活習慣などに関する質問紙調査を実施し、小学校低学年児童の骨量獲得に影響する要因について、とくに経年的な発育・発達の要因を調整した解析を行うことで明らかすることを目的としている。 2022年度においても、新型コロナウイルス感染症への対応に配慮しつつ、フィールドとする小学校において超音波骨評価装置を用いた骨評価・体格などの測定、食事の嗜好・睡眠や運動などの生活習慣などに関する質問紙調査を実施し、当該年度のデータの整理、入力を行った。また、前年度までに構築した縦断的な検討を行うためのデータベースに追加する形でデータの整理を行い、2022年度には経年変化データが追加可能であった52名を解析の対象として加えることが出来た。 縦断的な疫学調査においてはフィールドの確保および維持が第一である。コロナ禍のため規模をやや縮小してではあったが前年度までに引き続き測定を実施できたことで、研究期間における測定・調査結果によって得られた2年連続した280件の経年変化データベースおよび予備的な研究によって得られていた150件の経年変化データを加えた430件の小学校低学年児童について作成した全体のデータベースを基に統計学的解析を実施し、将来の骨折、骨粗鬆症の予防につなげられるような児童期の骨量獲得に関する因子、とくに運動、睡眠、食嗜好の関与についての知見を、ある程度のエビデンスを伴ってまとめることが出来たと考える。
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