研究実績の概要 |
3年目となる2019年は先天性全盲女児7歳を対象に,我々が開発した調節式白杖に新しいグリップ(Gp)の白杖操作時の上肢筋活動の関係を解析した. 測定方法:採取筋は右上肢の手指屈筋群(FF),手指伸筋群(FE),腕橈骨筋(BR),上腕二頭筋(BI),三角筋前部線維(AD),三角筋中部線維(MD)の6筋とした.使用機器はBiometric社製Data Lightで記録した.電極は乾電極で重量は17gであった.筋電位採取後はDKH社TRIASⅡで解析した.課題動作は,大(周径95-110mm)・中(87-103mm)・小(79-93mm)のGpを装着した調節式白杖と日常使用している白杖(本人)の4本を使用して,スライディング法(Slide),タッピング法(Tap),リフティング(Lift)の3種類と自由歩行とした.筋電位解析は,各動作の開始時から500msecのRMSを算出した. 結果:Tap操作のFFでは本人の杖が最大値を示した.FE,BR,BIは他のGpと比較し低い値を示した.大GpではFE,BR,BIが最大値を示した.slide法では,本人の杖を使用時は全ての筋において,他のGpよりも高い値を示した.lift時のFFは大Gpで低値を示した.EFは本人の白杖で他のGpよりも高い値を示した.BRは大Gpで高値を示した.また,自由歩行中はFE,BB,MDが増大した. 考察:本事例が所有している白杖は日常使い慣れているのでRMS値は全ての課題おいて低い値と想定したが,slide操作では全ての筋で他の白杖に比較し高値を示した.手の小さな小学生では大Gpは手指屈筋の活動が低いことがわかった.本事例は日常では,Tap法を用いていた.自由歩行時は全ての筋で安静起立時のTap操作よりも高い活動量を示したことから,歩行時の上肢筋活動は安静時のよりも大きくなることがわかった.
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