本研究は、保育環境に対する子どもの能動性に着目、評価する「信頼モデル」を実装した、障害のある子どもの個別の指導計画及び保育記録の様式の開発を行い、多様な個性、人格をもつ子どもたちが生活する保育の場において、子ども一人ひとりを中心とした保育を構想、実現するための基盤構築を目的とした。最終年度は、研究期間全体を通して実施してきた、信頼モデルに基づく個別の指導計画及び保育記録の様式試案を用いた実践研究の成果を総括した。結果、保育者は、保育環境に対する子どもの能動性を、様式試案を用いて言語化することにより、定型発達と比較して「できる/できない」のような二項対立的な子ども理解だけではなく、遊び、人とのかかわり、合理的配慮など、多様な視点から子どもを理解し、目標と指導の手立てを構想することが示された。また、信頼モデルに基づく個別の指導計画及び保育記録の作成を継続した幼稚園では、その後、全体の保育形態や保育記録の見直しなどが行われ、障害のある子どもを対象とした計画や記録の見直しが、障害の有無を問わず、全ての子どもを対象とした保育の在り方の見直しの契機となりうることが示された。研究成果は、研究期間全体を通して論文4編、図書4編、学会発表4編として発表するとともに、最終年度は、研究成果を地域に還元することを目的として「障害のある幼児の発達支援フォーラム 子ども理解における信頼モデル」の題目で、地域の教育、福祉、医療関係者、保護者を対象とした研究成果報告会を実施した。
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