研究課題/領域番号 |
17K01922
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
石山 ゐづ美 常葉大学, 保育学部, 教授 (70541704)
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研究分担者 |
赤間 公子 帝京学園短期大学, その他部局等, 准教授(移行) (40759883)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インフォームド・アセント / 子ども / 研究参加 / レジリエンス |
研究実績の概要 |
平成29年度は、2016年10月に石山らが4歳~9歳の子ども18人を対象として実施した面接調査について研究協力者(発達研究所セラピスト)とともに分析を行い、さらに学会発表を通して専門家からの意見を収受した。これらを踏まえ、パイロット調査の準備として主に以下2点の改良を行った。 1. 7歳前後の子どものためのアセント能力測定尺度 2016年調査では、大人のための同意能力測定尺度:MacCAT-CRを参考に試作した、子どものためのアセント能力測定尺度を用いた。調査結果を基に、子ども一人一人の記録を精査しながら分析を行い、尺度の改良を試みた。理解(understanding)、認識(appreciation)、論理的思考(reasoning)、選択の表明(expressing a choice)の4カテゴリーで構成することは保持し、質問項目の絞り込み、5歳児に分かる言葉への修正、5歳児に適する意思表明方法への変換、所要時間の短縮等を意図して尺度の改訂を行った。 2. 幼児用レジリエンス尺度 本研究では、子どものインフォームド・アセントに関する研究を行うと同時に、アセントの手続きを経て子どもが研究に参加する、幼児用レジリエンス尺度の開発にも取り組む。既存の幼児~小学校低学年用レジリエンス尺度は、全て保育者評定の方式であり、幼児回答方式の尺度はみられない。2016年調査に用いた尺度(案)は、保育者評定用を5歳児に理解可能な言葉に修正して作成したものであった。(案)を基に、子どもからの回答および面接担当者からの感想を参考に、新たに「幼児の対人葛藤場面における問題解決方法」に着目した発達研究の知見も加えて検討を行った。子ども一人一人の持つ実体験が異なるため、回答し難い質問があるという限界が明らかになり、今後は場面想定がしやすい図版の導入を検討しながら尺度開発を進めていくこととなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、当初計画されていた子どもを対象とするパイロット調査の準備としてまず、2016年調査の検証を行い、7歳前後の子どものための 1) アセント能力測定尺度、2) 意思確認書、3) 言葉による説明と説明文書、4) 解説資料(紙媒体・映像)、5) 幼児~小学校低学年用レジリエンス尺度、の改良と確定を行う計画であった。2016年の面接調査を担当した研究協力者(発達研究所セラピスト)との話し合いの過程で、レジリエンス尺度に関する問題点が議論となった。回答のために必要となる場面想定が子どもにとって容易でなく、子ども一人一人の持つ実体験が異なるために「そういうことがないからわからない」という反応が多く見られた点についての修正が求められ、研究者からの説明と子どもによる理解を補助するための図版開発の必要性が、新たな課題として浮上してきた。 この図版開発が年度内に実現しなかったため、計画されていたパイロット調査の準備が整わず、結果としてパイロット調査自体が実施できなかった。 以上のような理由により、進捗状況はやや遅れていると判断された。
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今後の研究の推進方策 |
計画1. 幼児~小学校低学年用レジリエンス尺度のための図版開発:発達研究所セラピストの協力、および必要な場合は絵画・イラストの専門家からの協力を得て、面接調査時に子どもによる理解を補助することを目的とした図版を作成する。 計画2. パイロット調査準備:パイロット調査で用いる 1) アセント能力測定尺度、2) 意思確認書、3) 言葉による説明と説明文書、4) 解説資料(紙媒体・映像)、5) 幼児~小学校低学年用レジリエンス尺度、6) レジリエンス尺度のための図版、の確定を行う。 計画3. パイロット調査 (対象:4~9歳児30人) の実施:調査のための参加者募集および会場借上げを行う。調査では、保護者から研究協力への同意が得られた7歳前後の子どもたちを対象に、計画2. の 1)~4) を使用したインフォームド・アセント(あるいはディセント)のための[面接1]を、研究代表者と研究分担者が実施する。次に、[面接1]において研究参加へのアセントが得られた子どもを対象として、レジリエンス研究としての[面接2]を研究協力者(発達研究所セラピスト)が実施する。その際には、計画2. の 5)~6) を使用する。最後に、参加した子どもたちに研究者らがグループ・インタビューを実施し、[面接1]・[面接2]に関する意見聴取を行う。 計画4. 尺度等の妥当性の検討:[面接1]・[面接2]の結果と録画映像、子どもたちへのグループ・インタビューの結果を対象として分析する。研究者らと研究協力者による協議を行い、パイロット調査で用いた1)~6) の検証を行う。主に、アセント取得年齢の妥当性、7歳前後の子どものためのアセント能力測定尺度の妥当性、および、幼児~小学校低学年用レジリエンス尺度妥当性の3点について考察し、本研究の結論を導く。 計画5. 結論を論文等にまとめ、研究発表等により研究成果の発信を行う。
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