研究課題/領域番号 |
17K01923
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
加藤 正晴 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (20408470)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム / 顔認知 / 睡眠障害治療 |
研究実績の概要 |
睡眠障害を持つ対象者は、発達障害、特にASDと診断される人が多く含まれる。本研究の目的は睡眠障害の治療がASDの諸症状の改善にも効果があるかを検討することである。 2018年度は睡眠障害治療をする28名を対象に、治療の前後で顔認知課題を実施し、その成績の変化を検討した。顔認知課題ではまず顔画像全般に対する好感度および家画像全般に対する好感度を計測した。一般に人の顔は物体よりも注目される傾向にある。実験の結果、治療の前後で顔画像を好む傾向が有意に改善する(t(27=2.34, p=.027)一方で、コントロールとして行った家画像に対する好感度は治療前後で変化しないことが明らかになった。また参加者の発達障害の特性別評価(MSPA)の結果と、顔画像に対する好悪判断の変化との関係を重回帰分析したところ,14ある特性のうち、こだわり・粗大運動・不注意に関連することが示された。 顔に対する視線パタンの参加者間の類似度についても分析を行った。ASDは健常者と比べて視線パタンの類似度が低く出ることがしられている。実験の結果、睡眠障害治療の前後でこの指標が優位に上昇した(一般化線形混合モデル, p=.030)。 これらのことはASDの顔画像に対する反応が睡眠障害の治療により改善することを示唆する。以上の結果をまとめて、日本心理学会で発表する予定である。 本研究テーマに関連して、ASDの触覚過敏についての成果をScientific Reportsに掲載した。これはASDの直角過敏は自律神経系の反応の非典型性が関係することを示したものである。本研究テーマでは心拍計測を行う予定であるが、これは一つには自律神経系の活動リズムの把握を目的としており、今後の本研究の進展に有用な知見を提供するものである。その他5件の論文を掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度の実験により、睡眠障害治療がASDの特徴の一つである人の顔に対する行動変容を促すことが明らかになった。この知見は研究課題の仮説に対して、肯定的に答えたという点で大きな進展である。今後研究計画を含めた他の課題についても示していく必要がある。特に体内リズムの計測については2018年度進めることができなかった。本研究課題で研究を実施する医療機関では、他機関とも研究を行っており、それらとの兼ね合いがあったためである。体内リズムの計測に必要な物品についても2018年度は購入を見送った。 以上、予想以上に進捗した側面と、進めることができなかった点の両方があり、総じて評価すると、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は昨年の反省を踏まえ、医療機関とのコミュニケーションを密にとることで体内リズムの計測実験を実施できるように力を尽くす。
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次年度使用額が生じた理由 |
今研究計画で実験を実施する医療機関では他の研究も同時に進行している。すでに走り出していた他の研究に途中から加わる形で本研究を始めたため、当初予定であった体内リズムの計測を実施することができなかった。そのためウェアその他の購入が実施されなかった。しかし、今年度は単独で倫理審査を受けて研究を実施する準備をすすめている。前年度行われたかった調査も含めて実施する予定のため、昨年度計画していた物品は今年度に購入する予定である。
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