研究課題/領域番号 |
17K01923
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
加藤 正晴 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (20408470)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / 睡眠障害 / 顔認知 |
研究実績の概要 |
自閉症スペクトラム障害をもつひとの40-60%は睡眠障害を持つといわれる。生体リズムの障害と社会性リズム(ひきこみ)の障害との関係を検討するため、兵庫県立リハビリテーション中央病院子どもの睡眠と発達医療センターにて、入院患者を対象に実験を行った。現在も実験継続中である。 昨年度は本研究により、顔に対する視線パタンの参加者間の類似度について分析を行った。ASDは健常者と比べて視線パタンの類似度が低く出ることが知られている。実験の結果、睡眠障害治療の前後でこの指標が優位に上昇した(一般化線形混合モデル, p=.030)ので、今年度はこの結果を日本心理学会で発表した。一方、本年は実施先の病院の方針転換、病院の連携研究者が病気で長期入院した(まだ入院中)ため、思うほど進めることができなかった。 そこで実験刺激の改良や実験準備に時間を費やした。まず昨年度の実験により、顔刺激に対する好悪判断が睡眠障害治療後に上昇する結果が得られた。しかしこれは、同じ顔を複数回見ることによる親近感の上昇がその顔画像に対する高感度を上昇させる単純接触効果のせいである可能性があった。そこで、顔認知課題の刺激を変更し、治療の前後で同じ顔を二度呈示しないこととした。 昨年度実施した顔認知課題に付け加え、新しく半構造化した面接状況における会話の分析を行うための刺激作りを行った。さらに新しく二人の参加者による共同課題に対する反応を計測する実験の準備もおこなった。ASDのアナログ研究において、お互いの貢献度がわからない共同課題において、ASD傾向の強い人ほど他人に任せず自分で頑張ってしまうことが示されている。本研究において、この傾向が睡眠障害の前後でどう変わるか検討する予定である。 今後体制を立て直し、引き続き研究を推進させる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
以下の想定外の事由によりはかばかしい進展は得られなかった。研究実施先の病院でセンター長が交代し、病院の方針が変わったこと。それにより外来患者は増加したが入院患者がおよそ半減したこと(本研究では入院患者を対象としていたため、大変痛手)また、連携研究員の1名が年度中頃より長期入院をしており、残りの1名に臨床業務が過度に増加し、患者のリクルートができなくなった。その結果当初予定では100名の調査を想定していたが、実績は若干名にとどまった。 しかし研究を成功させるため、次年度にむけて状況打破のためのいくつかの準備を行った。一つが研究コーディネータの雇用である。研究コーディネータは連携研究者の代わりにリクルートを実施し、実験補助も行う。この人物は病院医師や看護師などの病院スタッフとも円滑に連携をとれる人物である必要があり、また看護師の資格を持つことを病院から要請され、該当者を探すのに苦労したがなんとか見つけた。その人物に参加者リクルートのための訓練を行った。 もう一つ、前年度の研究で得られた結果を踏まえ、顔課題においては刺激を新しく作成しなおした。さらに翌年に追加予定であった課題を、予定よりも少ないサンプルサイズでも効果を検出できるように実験デザインを改良し作り直した。
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今後の研究の推進方策 |
新たにサポートスタッフを迎え入れ、実施する。しかし病院の方針変更もあり、当初想定よりも入院患者数が半分以下に減っている。研究期間の延長を視野に入れつつ確実に研究を続ける予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実施先の病院で体制がかわり病院の治療方針が変わったこと。連携研究者の1名が年度中頃より長期入院を続けており、その結果もう1名の連携研究者も臨床で非常に多忙になり、参加者のリクルートが実質上止まってしまったこと。その結果予定よりも出張回数が減少し、次年度使用額が0より大きくなった。 2019年度は院内でリクルートを請け負う人物を雇用し研究を続けられるようにする(すでに人材は確保済み)。治療方針がかわり、対象となる入院患者が減少しているが、研究期間を延長してデータの確保を検討している。
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