研究課題
当初計画時の最終年度であった2019年度に研究実施上の重要な人物が逝去した。その影響で計画延長した2020年度は今度は研究実施先の病院が新型コロナウィルスの重症患者の受け入れ病院となった関係で、研究協力先の病棟が閉鎖され、追加調査を実施することができないアクシデントに見舞われた。研究のメインストリームについては上述のごとく想定外のことが続けて起こり、捗々しい成果は得られなかった。しかしながら関連部分において進展があった。乳幼児期の睡眠リズムの乱れがその後の発達障害(特に自閉症スペクトラム(ASD))に関連があることが言われている。そこで赤ちゃん学研究センターにあるデータベースのうち、アートチャイルドケア株式会社より預かる乳幼児7000名余りの睡眠データの解析許可を得て解析し、睡眠パタンの乱れのなかでもなにを臨床医が良くないと考えているのかを統計的に明らかにした。その結果、睡眠の質が悪いと臨床医が判断する乳幼児の睡眠パタンの客観的特徴が明らかになった。この成果は発達心理学会にて学会発表した。また、睡眠を妨げる要因の1つである乳児の泣きおよび泣きに対処する母親の認識について、母親から縦断的にアンケートを取り、その結果も学会報告した。現在国際誌に投稿中である。また、本研究のテーマの1つであるASDについて、2017年に私たちが発表した並んで歩く二人の歩調同期の程度がASD傾向と相関する報告をした。今年度はこれをさらに発展させ、歩調同期の程度が並んで歩く相手との会話の盛り上がりとは統計的に独立であることを示した。この成果は国際誌に掲載された。
3: やや遅れている
研究実施先の病院が新型コロナウィルスの受け入れ病院となり、協力先の病棟がまさにコロナ病床となった。本研究は睡眠障害を治療する病院に入院する患者を対象に実験を行うものであったため、実験ができなくなった。現状統計分析をするにはデータ数が十分でないため、少しでもデータを追加できるようになるよう待っている状況である。一方で関連部分において進展があった。乳幼児期の睡眠リズムの乱れがその後の発達障害(特に自閉症スペクトラム(ASD))に関連があることが言われており、そのため赤ちゃん学研究センターにあるデータベースの乳幼児の7000名余りの睡眠データを分析し、睡眠とその規定因について学会発表した。睡眠を妨げる要因の1つである乳児の泣きについて、母親から縦断的にアンケートを取りその結果も学会報告した。
協力先病院の病棟が再び睡眠治療を行えるようになり、本研究も再開できるのを待つとともに、現状のデータのみでもなにか示せるものがないか、分析方法に工夫を凝らす、あるいは事例研究的な報告とすることで成果をまとめる。
コロナにより協力研究先である病院で実験が実施できなかったため、出張費および実験補助者への謝金がほぼ発生しなかった。今年度は以下の使用計画を立てている。すなわち、資料整理及び解析補助のために補助者を雇用する。音声データのアノテーション作業についてはフリーランスの方が在宅でできるよう業務委託を利用し、解析を加速させる。そのほか論文投稿費、掲載費で利用する。
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日本音響学会
巻: 77(3) ページ: 215-220
Acta Psychologica
巻: 210 ページ: 103172
10.1016/j.actpsy.2020.103172