研究課題/領域番号 |
17K01923
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
加藤 正晴 同志社大学, 研究開発推進機構, 准教授 (20408470)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 睡眠 / 自閉症スペクトラム / ASD / 泣き |
研究実績の概要 |
当初計画時の最終年度であった2019年度に研究実施上の重要な人物が逝去したこと、2020年度以降はコロナの影響で研究実施先の病院で対象となる病棟が閉鎖されたことがあり、当初の研究計画からの軌道修正を余儀なくされた。そこで、アートチャイルドケア株式会社より預かる乳幼児7000名余りの睡眠データの解析を行なった。研究当初は体内リズムの中でももっとも顕著な睡眠覚醒リズムに注目し、小規模サンプルではあるが、睡眠障害を抱える患者への睡眠治療(介入)により、かれらに多く観察される自閉症スペクトラムに特徴的な症状に変化が生じるかを観察することを目標としていたが、これを方向変換し、睡眠覚醒リズムへの介入は行わないがその分大規模サンプルを用いることで睡眠と自閉症スペクトラムの関係性を調べる手法へと切り替えたと言える。今年度は睡眠に問題がある、すなわち自閉症スペクトラムと関連があると想定される乳児をプレスクリーング可能とするアルゴリズムの開発を進め、日本赤ちゃん学会で発表した。さらに詳細な分析を加えて現在Frontiers in Pediatricsに投稿中である。 一方、乳児の睡眠覚醒リズムの乱れは母親の睡眠リズムを乱す。特に夜泣きに代表される乳児の泣きは母親の育児ストレスを高めると言われている(Reijneveld et al., 2004; Soltis, 2004)。そこで、母子の睡眠を妨げる要因の1つである乳児の泣きおよび泣きに対する母親の認識様式の変化について、母親から縦断的にデータを収集し分析した。この研究では、母親は子どもが育つとともに徐々に子どもの泣きへの反応を弱めていく傾向を見出した。ただしその変化は一様ではなく、子どもの気質によっても異なる。この結果は2021年12月にFrontiers in Psychologyに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の周辺状況について、研究協力者の逝去、協力先の病棟が使えなくなったといった想定外の状況が発生し、研究計画の大幅な軌道修正を余儀なくされた。しかしその中でも学会発表、論文刊行ができたことは想定以上の成果であり、当初からの落ち込みをカバーするものであると言える。
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今後の研究の推進方策 |
協力先病院の病棟が再び睡眠治療を行えるようになり、本研究も再開できるのを待つのは現実的ではない。次年度で研究をまとめる方針である。引き続き現状のデータのみで事例研究を進める予定である。 一方で、以前より独自で行ってきた乳幼児の睡眠時の心拍データを用いて睡眠と日中の子どもの行動(ストレス状況)についての分析も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
音声データのアノテーション作業および、論文投稿費、掲載費については予定通り使用したが、当初雇用予定であった補助者については、良い人材が見つからず雇用しなかった。 次年度は主として論文投稿費、掲載費に使用する。その他データ整理に必要な機材の購入費とデータ整理の補助者の雇用を予定する。
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