研究実績の概要 |
本研究の目的は,①小学校での動物飼育についての全国調査による,学校動物飼育の現状と課題の解明,②学校動物の飼育方法の違いと教育的効果との関係についての,心理的発達を指標としての縦断的な調査であった。2017年5・7月の研究運営会議を経て,以下の調査を行った。 ①全国調査:全国小学校理科教育研究協議会を通し,動物飼育を行っている小学校1,700校へのアンケート調査を依頼。平成30年5月の時点で,FAXにより477件Webにより屋内飼育57件、屋外飼育85件の回答を得た。また電話調査では,全国約20,580校の10分の1にあたる2,000校の小学校を無作為抽出し,電話により動物飼育の有無,飼育種,動物の世話等を調査。 ②継続調査:愛知県、西東京市、福岡県、神戸市、奈良市の49小学校に第1回調査を実施。学年飼育校23校(対象児童約1,700名)に2017年12月にアンケートを送付。また委員会飼育校19校(同約2,500名),飼育なし校8校(同約1,100名)に2018年3月にアンケートを送付。 意義および重要性 全国調査は,鳥インフルエンザ発生以後初となる全国規模での調査となる。特に無作為抽出による全都道府県約2,000校への電話調査はわが国の学校動物飼育の現状を明確化しうる貴重なデータとなる。 また継続調査は,多くの獣医師・心理学研究者・小学校の協力を得て「学校での動物飼育が子どもの心理的発達に与える影響」に関する,わが国初の地域を跨いでの大規模研究となった。また,飼育をしている児童,飼育はしていないが学校に動物がいる児童,飼育動物がいない学校の児童を高学年/低学年別に比較する本研究は,先行研究には見られない独自性と複雑性を有する。実行可能性の高い研究計画を立案し,第1回目の調査を実施し得たことは,第2回・第3回と続く調査研究貫徹のための礎を築き得た点において重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国調査:計画は「全国各地の約1000校を抽出し飼育動物の現状と課題について質問紙調査」であった。しかし当初想定していた2つの実施手段,すなわち行政への依頼(日本獣医師会の協力を得て都道府県の家畜伝染病予防法の調査データを取得),教育委員会を通じての依頼(市町村の教育委員会への協力を依頼→承諾を得た市町村教育委員会には,質問紙調査を行う小学校の選定を依頼→選定された小学校に調査依頼)は実行がかなわなかった。そこで,無作為抽出による全都道府県約2,000校への電話調査により,当初予定していた動物飼育の実態(飼育の有無,飼育動物種など)を実施。また,全国小学校理科教育研究協議会を通しての飼育実施校への調査により,当初予定していたアンケート調査(飼育担当の教職員・児童について,飼育上の課題・問題点,飼育の利点・欠点,動物の病気・死亡時の対応,獣医師との連携等)を遂行。 継続調査:当初の計画は,これまでに調査協力実績のある小学校約15校に対し継続調査を依頼することであった。調査においては,第1回~第3回までの継続調査であるため各調査回の各児童の回答が照合できるよう出席番号を記すなど,学校との信頼関係を築くことが調査成立の鍵であった。しかるに本研究では,各地方獣医師会の協力により想定を超える49校約5,000名以上の児童の協力を得ることができた。また当初は第4学年の児童のみへの調査を想定していたが,低学年への調査の協力もいただき,結果的に学年飼育校,委員会飼育校,動物飼育なし校とも,第4学年および低学年における調査を行うことができた。第1回目調査の回収も順調で,想定した回収率が望みうる。 継続調査が成り立つためには、平成29年度中の第1回調査は必須である。また全国調査も研究計画上平成29年度中に着手する必要があった。その点においても本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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