遺伝性発癌高リスク群の子ども期放射線被ばくによる発癌リスク評価とその機構解明

2017 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 17K01938
• 研究機関: 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
• 研究代表者: 森岡 孝満 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 放射線影響研究部, 主幹研究員(定常) (70253961)
• 研究期間 (年度): 2017-04-01 – 2020-03-31
• キーワード: 大腸がん / 放射線 / 子ども

研究実績の概要

子どもは、放射線に感受性が高く、被ばくによる発癌が危惧されている。遺伝的に発癌高リスク群の子ども達が被ばくした場合の発癌リスクはさらに増加するのかは不明である。
本研究は、大腸癌の遺伝性発癌高リスク群であるヒトHNPCC のモデルマウス(DNA ミスマッチ修復遺伝子の１つであるMlh1 遺伝子のヘテロ欠損マウス、Mlh1+/-マウス)を用いて、大腸癌の発生率や発生時期を詳細に検討し子ども期の放射線被ばくによる発癌リスク評価を行う。加えて、得られる大腸前癌病変と大腸腫瘍を用いて分子病理学的解析を行いMlh1+/-マウスにおける放射線誘発大腸発癌の発症メカニズムを明らかにする。
平成29年度は、我々が構築した遺伝性大腸癌高リスク群のモデルマウスを用いて実験群を設定した。始めに、Mlh1+/-マウスの凍結受精卵を融解胚移植して個体を作製した。その後、Mlh1+/-マウスを用いて、子ども期と成人期における放射線被ばく実験群を設定した。雌雄Mlh1+/-及び野生型マウスを用いて、①２週齢時にX線(2Gy)を照射する群(子ども期被ばく群)、②７週齢にX線照射する群(成人期被ばく群)、③２週齢にX線照射し、4週齢から大腸炎誘発剤(DSS)を飲水投与する群(子ども期被ばく+DSS投与群)、④7週齢にX線照射し、9週齢からDSS投与する群(成人期被ばく+DSS投与群)、⑤4週齢から DSS投与群(4週齢DSS単独投与群)、⑥9週齢から DSS投与群(9週齢DSS単独投与群)、⑦対照群(未処理群)を設定し実験を開始した。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

実験計画通りに実験群の設定が完了した。今後、大腸前がん病変と大腸腫瘍の病理解析、免疫組織化学解析を進める。

今後の研究の推進方策

今後、15週齢，25週齢及び50週齢で屠殺を行い、大腸粘膜における大腸前癌病変の検出をマリン固定後にアルシアンブルーpH2.5染色を施行し実体顕微鏡下でMDFを同定、計測する。また、ホルマリン固定された大腸はパラフィン包埋し連続切片を作製してMDF及びACFにおける病理学的検索と免疫組織化学的な検索を行う。

次年度使用額が生じた理由

(理由)
in situ hybridization(ISH)法による検討、レーザーマイクロダイセクション(LMD)による前癌病変からのDNA抽出を一部、平成30年度で行うことにしたため。
(使用計画)
ISH解析とLMD用消耗品とDNA抽出用試薬に使用予定である。

研究成果

• [雑誌論文] Epigenetic dysregulation of key developmental genes in radiation-induced rat mammary carcinomas (2018)
  • 著者名/発表者名: Daino Kazuhiro, Nishimura Mayumi, Imaoka Tatsuhiko, Takabatake Masaru, Morioka Takamitsu, Nishimura Yukiko, Shimada Yoshiya, Kakinuma Shizuko
  • 雑誌名: Int J Cancer 巻: - ページ: --
  • DOI: 10.1002/ijc.31309
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Age Modifies the Effect of 2-MeV Fast Neutrons on Rat Mammary Carcinogenesis (2017)
  • 著者名/発表者名: Imaoka T, Nishimura M, Daino K, Hosoki A, Takabatake M, Kokubo T, Doi K, Showler K, Nishimura Y, Moriyama H, Morioka T, Shimada Y, Kakinuma S.
  • 雑誌名: Radiat Res 巻: 188(4) ページ: 419-425
  • DOI: 10.1667/RR14829.1. Epub 2017 Aug 15.
• [雑誌論文] 放射線 ー宇宙放射線被ばくによる発がんリスクの推定ー (2017)
  • 著者名/発表者名: 柿沼志津子、森岡孝満
  • 雑誌名: 腎と骨代謝 巻: 30(3) ページ: 2017-225
  • 査読あり
• [学会発表] 宇宙放射線被ばくによる発がんリスク推定；病理およびゲノム変異解析から (2018)
  • 著者名/発表者名: 柿沼志津子、甘崎佳子、 尚 奕、 臺野和広、森岡孝満、鶴岡千鶴
  • 学会等名: 新領域学術研究「宇宙に生きる」2017年度第2回全体会議, 新領域学術研究「宇宙に生きる」
• [学会発表] 放射線誘発消化管腫瘍に対するカロリー制限の修飾効果 (2017)
  • 著者名/発表者名: 森岡孝満、山崎隼輔、砂押正章、横溝真哉、上西睦美、小川真里、山田裕、金小海、臺野和広、柿沼志津子
  • 学会等名: 日本放射線影響学会 第60回大会
• [学会発表] 放射線誘発マウスTリンパ腫におけるエピゲノム異常の解析 (2017)
  • 著者名/発表者名: 武井怜奈、臺野和広、砂押正章、甘崎佳子、森岡孝満、島田義也、柿沼志津子、永田喜三郎、野川宏幸
  • 学会等名: 日本放射線影響学会 第60回大会
• [学会発表] γ線または中性子線誘発ラット乳がんにおけるサブタイプ分類とゲノム変異の解析 (2017)
  • 著者名/発表者名: 森山ひとみ、臺野和広、今岡達彦、高畠賢、西村由希子、西村まゆみ、森岡孝満、井上一雅、島田義也、福士政広、柿沼志津子
  • 学会等名: 日本放射線影響学会 第60回大会
• [学会発表] Effect of low dose rate Cs-137 gamma rays on rat mammary carcinogenesis (2017)
  • 著者名/発表者名: Tatsuhiko Imaoka, Mayumi Nishimura, Kazuhiro Daino, Toshiaki Kokubo, Takamitsu Morioka, Yoshiya Shimada, Shizuko Kakinuma
  • 学会等名: 第76回日本癌学会学術総会
• [学会発表] 低線量率放射線によるラット乳がんリスク (2017)
  • 著者名/発表者名: 今岡達彦、西村まゆみ、臺野和広、細木彩夏、高畠賢、西村由希子、小久保年章、森岡孝満、土居主尚、島田義也、柿沼志津子
  • 学会等名: 低線量放射線影響研究交流会
• [学会発表] 放射線と炎症の複合暴露が大腸発がんに与える影響 (2017)
  • 著者名/発表者名: 森岡孝満、臺野和広、今岡達彦、西村まゆみ、山田裕、島田義也、柿沼志津子
  • 学会等名: 第5回 日本家族性大腸腺腫症研究会学術集会
• [学会発表] γ線を照射したマウスに発生するBリンパ腫の病理学的解析 (2017)
  • 著者名/発表者名: 橘拓孝、森岡孝満、臺野和広、小川真里、島田義也、柿沼志津子、小林芳郎、永田喜三郎、野川宏幸
  • 学会等名: 平成29年度 若手放射線生物学研究会 専門研究会, 若手放射線生物学研究会
• [学会発表] 放射線誘発マウスTリンパ腫におけるDNAメチル化異常の解析 (2017)
  • 著者名/発表者名: 武井怜奈、臺野 和広, 砂押 正章, 甘崎 佳子, 森岡 孝満, 柿沼 志津子, 島田 義也, 永田 喜三郎, 野川 宏幸
  • 学会等名: 平成29年度 若手放射線生物学研究会 専門研究会, 若手放射線生物学研究会
• [学会発表] γ線・中性子線誘発ラット乳がんの 免疫組織化学的特徴及びDNAコピー数変化の解析 (2017)
  • 著者名/発表者名: 森山ひとみ、臺野和広、今岡達彦、西村由希子、西村まゆみ、高畠賢、森岡孝満、井上一雅、柿沼志津子、福士政広、島田義也
  • 学会等名: 平成29年度 若手放射線生物学研究会 専門研究会, 若手放射線生物学研究会
• [学会発表] 妊娠によるラット乳がんの予防効果は放射線被ばく時年齢に依存する (2017)
  • 著者名/発表者名: 高畠賢、臺野和広、今岡達彦、西村まゆみ、森岡孝満、小久保年章、森山ひとみ、西村由希子、金小海、山田裕、福士政広、島田義也、柿沼志津子
  • 学会等名: 第32回発癌病理研究
• [学会発表] 環境エンリッチメントによる放射線影響に対する抑制効果の評価 (2017)
  • 著者名/発表者名: 横溝真哉、西村まゆみ、森岡孝満、山崎隼輔、尚 奕、鶴岡千鶴、西村由希子、柿沼志津子、島田義也
  • 学会等名: 第54回アイソトープ・放射線研究会
• [学会発表] 137Csγ線あるいは2MeV速中性子線の被ばくにより誘発されるラット乳がんの分子生物学的特徴 (2017)
  • 著者名/発表者名: 森山ひとみ、臺野和広、今岡達彦、西村まゆみ、西村由希子、森岡孝満、井上一雅、柿沼志津子、福士政広、島田義也
  • 学会等名: 第54回アイソトープ・放射線研究会
• [学会発表] 環境エンリッチメントは放射線影響を抑制するか 条件設定および基礎データの構築 (2017)
  • 著者名/発表者名: 横溝真哉、森岡孝満、西村まゆみ、柿沼志津子、島田義也
  • 学会等名: 第71回東京支部春期学術大会
• [学会発表] 放射線誘発変異シグネチャーを用いた低線量率被ばくによる発がんリスク評価 (2017)
  • 著者名/発表者名: 鶴岡千鶴、Blyth J. Benjamin、森岡孝満、上西睦美、品川まゆみ、島田義也、柿沼志津子
  • 学会等名: 日本放射線影響学会 第60回大会（招待講演）
  • 招待講演
• [学会発表] 福島と千葉の小学生親子サイエンスキャンプ (2017)
  • 著者名/発表者名: 山田裕、森岡孝満、柿沼志津子
  • 学会等名: サイエンスアゴラ2017 「福島原発事故で学んだ何を次世代に伝えるか？」（招待講演）
  • 招待講演
• [学会発表] 放射線初期応答 幼若期エンリッチメント環境がもたらす効果 (2017)
  • 著者名/発表者名: 横溝真哉、西村まゆみ、森岡孝満、西村由希子、鶴岡千鶴、尚 奕、柿沼志津子、島田義也
  • 学会等名: 日本放射線影響学会第60回大会
• [学会発表] Illuminating Radiation Carcinogenesis with the Light of Quantum Technology (2017)
  • 著者名/発表者名: Tatsuhiko Imaoka, Takamitsu Morioka, Yukiko Nishimura, Mutsumi Kaminishi, Masaru Takabatake, Daisuke Iizuka, Ken-ichi Kudo, Kazuhiro Daino, Mayumi Nishimura, Akinari Yokoya, Koichi Yamakawa, Makoto Aoyama, Hiroyuki Takuwa, Makoto Higuchi, Shizuko Kakinuma
  • 学会等名: 1st QST International Symposium
• [学会発表] 高脂肪餌で飼育した母親から得られた仔マウスの放射線感受性I.照射300日目までの結果 (2017)
  • 著者名/発表者名: 田中薫、王 冰、勝部孝則、村上正弘、藤田和子、森岡孝満、西村まゆみ、柿沼志津子
  • 学会等名: 日本放射線影響学会第60回大会
• [学会発表] Cancer prevention mechanism of calorie restriction on childhood exposure to ionizing radiation in mouse model (2017)
  • 著者名/発表者名: 尚 奕、臺野和広、森岡孝満、石川敦子、大寺恵子、Ryoya Takahashi、柿沼志津子
  • 学会等名: Keystone Symposia Conference DNA and RNA Methylation（国際学会
  • 国際学会
• [学会発表] Age-dependent thymus regeneration after irradiation may change the initiating cells for radiation-induced lymphomagenesis (2017)
  • 著者名/発表者名: Masaaki Sunaoshi, Blyth J. Benjamin, Yi Shang, Chizuru Tsuruoka, Shinobu Sakairi, Takamitsu Morioka, Mayumi Shinagawa, Mari Ogawa, Atsuko Ishikawa, Kazuhiro Daino, Keiji Suzuki, Yoshiya Shimada, Akira Tachibana, Shizuko Kakinuma
  • 学会等名: 63rd Annual Radiation Research Society Meeting（国際学会）
  • 国際学会
• [学会発表] Detection of radiation signature in medulloblastoma after protracted gamma-ray exposure in Ptch1 heterozygous mice (2017)
  • 著者名/発表者名: 鶴岡千鶴、Blyth J. Benjamin、森岡孝満、上西睦美、品川まゆみ、島田義也、柿沼志津子
  • 学会等名: 63rd Annual Radiation Research Society Meeting（国際学会）
  • 国際学会
• [学会発表] Exploration of radiation signature in radiation-induced intestinal neoplasia of C3B6 F1 Apc Min/+ mice (2017)
  • 著者名/発表者名: 柳原啓見、山崎隼輔、山田裕、森岡孝満、鶴岡千鶴、甘崎佳子、上西睦美、遠坂歌子、島田義也、柿沼志津子
  • 学会等名: 63rd Annual Radiation Research Society Meeting（国際学会）
  • 国際学会
• [学会発表] 胎児期被曝の発がんリスク；化学発がん物質との複合影響について (2017)
  • 著者名/発表者名: 甘崎佳子、森岡孝満、臺野和広、石川敦子、尚 奕、鶴岡千鶴、島田義也、柿沼志津子
  • 学会等名: 日本放射線影響学会 第60回大会
• [学会発表] 放射線誘発マウス肝がん発生の年齢依存性と遺伝子変異解析 (2017)
  • 著者名/発表者名: 尚 奕、森岡孝満、臺野和広、甘崎佳子、島田義也、柿沼志津子
  • 学会等名: 日本放射線影響学会 第60回大会
• [学会発表] 放射線誘発ラット乳がんにおける発生関連遺伝子のエピジェネティック制御異常 (2017)
  • 著者名/発表者名: 臺野和広、西村まゆみ、今岡達彦、高畠賢、森岡孝満、西村由希子、島田義也、柿沼志津子
  • 学会等名: 日本放射線影響学会 第60回大会
• [学会発表] 放射線被ばくによる消化管腫瘍の発がんリスク評価法の確立 (2017)
  • 著者名/発表者名: 柳原啓見、山崎隼輔、山田裕、森岡孝満、鶴岡千鶴、甘崎佳子、上西睦美、遠坂歌子、島田義也、柿沼志津子
  • 学会等名: 日本放射線影響学会 第60回大会
• [学会発表] 被ばく時年齢の異なるマウスに発生するBリンパ腫の免疫組織化学的解析 (2017)
  • 著者名/発表者名: 橘拓孝、森岡孝満、臺野和広、小川真里、小林芳郎、永田喜三郎、島田義也、野川宏幸、柿沼志津子
  • 学会等名: 日本放射線影響学会 第60回大会
• [学会発表] ラット乳がん誘発の線量率効果は年齢依存的でありしきい値がある (2017)
  • 著者名/発表者名: 今岡達彦、西村まゆみ、臺野和広、細木彩夏、高畠賢、西村由希子、小久保年章、森岡孝満、島田義也、柿沼志津子
  • 学会等名: 日本放射線影響学会第60回大会
• [学会発表] A Plan of New Network for Low Dose Radiation Research in Japan: PLANET (2017)
  • 著者名/発表者名: Yutaka Yamada, Shizuko Kakinuma, Tatsuhiko Imaoka, Kazuhiro Daino, Takamitsu Morioka, Mayumi Nishimura, Tetsuo Nakajima, Michiya Sasaki, Yoshiya Shimada
  • 学会等名: 第4回ICRP国際シンポジウム・第2回ERPW（国際学会）
  • 国際学会
• [学会発表] ラットX線胸部照射による肺がんおよび乳がん誘発の照射時年齢依存性について (2017)
  • 著者名/発表者名: 山田裕、森岡孝満、臺野和広、西村まゆみ、柿沼志津子、島田義也
  • 学会等名: 第76回日本癌学会学術総会
• [学会発表] Dose Rate Dependence of Rat Mammary Carcinogenesis Following Protracted γ Ray Exposure (2017)
  • 著者名/発表者名: Tatsuhiko Imaoka, Mayumi Nishimura, Kazuhiro Daino, Ayaka Hosoki, Masaru Takabatake, Yukiko Nishimura, Toshiaki Kokubo, Takamitsu Morioka, Yoshiya Shimada, Shizuko Kakinuma
  • 学会等名: 43rd Annual Meeting of the European Radiation Research Society (ERRS/GBS 2017)（国際学会）
  • 国際学会
• [学会発表] Genomic alterations and subtypes of rat mammary carcinomas induced by gamma-rays or neutrons (2017)
  • 著者名/発表者名: Hitomi Moriyama, Kazuhiro Daino, Tatsuhiko Imaoka, Mayumi Nishimura, Yukiko Nishimura, Takamitsu Morioka, Shizuko Kakinuma, Kazumasa Inoue, Masahiro Fukushi, Yoshiya Shimada
  • 学会等名: PTCOG 56 Annual Conference（国際学会）
  • 国際学会
• [学会発表] Genomic and histological alterations in mouse lung adenocarcinomas induced by gamma-rays, carbon ions or neutrons (2017)
  • 著者名/発表者名: 柿沼志津子、山崎隼輔、岩田健一、山田裕、森岡孝満、臺野和広、上西睦美、小川真里、島田義也
  • 学会等名: PTCOG 56 Annual Conference（国際学会）
  • 国際学会