研究課題
子どもは、放射線に感受性が高く、被ばくによる発癌が危惧されている。遺伝的に発癌高リスク群の子ども達が被ばくした場合の発癌リスクはさらに増加するのかは不明である。本研究は、大腸癌の遺伝性発癌高リスク群であるヒトHNPCC のモデルマウス(DNA ミスマッチ修復遺伝子の1つであるMlh1 遺伝子のヘテロ欠損マウス(Mlh1+/-マウス)を用いて、大腸癌の発生率や発生時期を詳細に検討し子ども期の放射線被ばくによる発癌リスク評価を行う。加えて、得られる大腸前癌病変と大腸腫瘍を用いて分子病理学的解析を行いMlh1+/-マウスにおける放射線誘発大腸発癌の発症メカニズムを明らかにする。平成30年度は、我々が構築した遺伝性大腸癌高リスク群のモデルマウスMlh1+/-マウスを用いて、①2週齢時にX線(2Gy)を照射する群(子ども期被ばく群)、②7週齢にX線照射する群(成人期被ばく群)、③2週齢にX線照射し、4週齢から大腸炎誘発剤(DSS)を飲水投与する群(子ども期被ばく+DSS投与群)、④7週齢にX線照射し、9週齢からDSS投与する群(成人期被ばく+DSS投与群)、⑤4週齢から DSS投与群(4週齢DSS単独投与群)、⑥9週齢から DSS投与群(9週齢DSS単独投与群)、⑦対照群(未処理群)を設定し25週齢時と50週齢時に解剖を行い、大腸に発生した腫瘍数とサイズを計測した。加えて、病理組織標本を作製し病理学的な解析を行った。その結果、放射線照射と炎症剤の複合暴露によって有意に大腸癌の発生が高くなることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
実験計画通りに実験群の解剖と大腸腫瘍の病理解析を進めた。
大腸に発生した腫瘍組織よりDNAを抽出し、正常Mlh1遺伝子の片アレルの変異の有無と次世代シーケンサー解析にて放射線誘発大腸癌と自然発症大腸癌との遺伝子変異の違いを検討する。
理由腫瘍部におけるISH(in situ hybridization)法による検討とLMD(レーザーマイクロダイセクション)によるDNA抽出の条件設定に時間を要したため一部の行程を平成31年度に行うことにしたため。使用計画ISH用プローブとLMD用フイルムスライド購入に使用する予定
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (46件) (うち国際学会 9件、 招待講演 6件)
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