研究課題
子どもは、放射線に感受性が高く被ばくによる発癌が危惧されている。遺伝的に高発癌リスク群の子ども達が被ばくした場合の発癌リスクは更に増加するのかは不明である。本研究では、大腸癌の遺伝性発癌高リスク群であるヒトHNPCCのモデルマウスであるMlh1+/-マウス(DNAミスマッチ修復遺伝子の1つであるMlh1遺伝子のヘテロ欠損マウス)を用いて、大腸癌の発生率や発生時期を詳細に検討し子ども期の放射線被ばくによる発癌リスクの評価を行った。平成31年度は、我々が構築した遺伝性大腸癌の高リスクモデルマウスであるMlh1+/-マウスを用いて、①2週齢時にX線(2Gy)を照射する群(子ども期被ばく群)、②7週齢にX線照射する群(成人期被ばく群)、③2週齢にX線照射し、4週齢から大腸炎誘発剤(DSS)を飲水投与する群(子ども期被ばく+DSS投与群)、④7週齢にX線照射し、9週齢からDSS投与する群(成人期被ばく+DSS投与群)、⑤4週齢から DSS投与群(4週齢DSS単独投与群)、⑥9週齢から DSS投与群(9週齢DSS単独投与群)、⑦対照群(未処理群)の計7群の全てのマウスを25週齢時と50週齢時に解剖を行い、大腸に発生した腫瘍数とサイズを計測した。加えて、得られた大腸腫瘍を用いて病理組織学的および免疫組織学的解析を行った。その結果、25週齢での大腸腫瘍の発生は僅かであり、雄Mlh1+/-マウスに1%DSSを単独投与した群とX線とDSSの複合暴露群においてのみ発生が認められた。大腸腫瘍の総数は、1%DSS単独投与と複合暴露の群間での有意な差は認められなかった。一方、50週齢での大腸腫瘍の発生は、雄Mlh1+/-マウスの複合暴露群で増加傾向を示し、X線及びDSSの単独群に比較し有意に増加した。本研究結果から、放射線被ばくと炎症剤の複合暴露は大腸癌のリスクを増加させることが分かった。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (36件) (うち国際学会 9件、 招待講演 6件)
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