研究課題/領域番号 |
17K01944
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
落合 秋人 新潟大学, 自然科学系, 助教 (40588266)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 抗真菌 / 抗炎症 / ディフェンシン / α-アミラーゼ / イネ / 生理活性タンパク質 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、ヒト由来α-アミラーゼHsAmyおよびイネ由来ディフェンシンOsAFP1が細菌内毒素と結合することを近年発見した。また、OsAFP1は歯周病の重症化に関与する日和見感染真菌に対して、既存の抗生物質とは異なる機構で抗真菌活性を示すことを見出している。本研究においては、まず[1] HsAmyおよびOsAFP1の内毒素結合メカニズムの解析とin vitroにおける抗炎症作用の検証を行う。さらに、[2] OsAFP1の抗真菌作用メカニズムの解明を行う。これにより、天然物由来の素材を利用した新たな歯周病治療法を開発するための基盤技術の構築を目指す。本年度は、以下に挙げる成果を得た。 [1] HsAmyおよびOsAFP1の内毒素結合メカニズムの解析とin vitroにおける抗炎症作用の検証……解析に先立ち、本年度はHsAmyの組換えタンパク質の調製を行った。より天然型に近い修飾糖鎖を有する組換え体が解析には必須である。そこで、ヒトHEK293細胞を利用した発現系を構築し、トランスフェクションした細胞から組換えHsAmyを取得した。 [2] OsAFP1の抗真菌作用メカニズムの解明……真菌細胞に対してOsAFP1を処理したところ、処理時間とともに生菌数が減少したため、OsAFP1は殺菌的に作用することがわかった。また、FITC-Annexine Vなどの蛍光試薬を用いた観察の結果、OsAFP1を処理したほぼ全ての細胞にアポトーシスが誘導され、ネクローシスを示す細胞は観察されなかったことから、OsAFP1はアポトーシスを誘導することにより殺菌作用を示すことが明らかになった。また、OsAFP1抗体を使用した免疫染色を行った結果、OsAFP1はC. albicans細胞の細胞壁近傍に局在しており、OsAFP1は細胞壁内の特定分子をターゲットとする可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した初年度の研究計画[2] OsAFP1の抗真菌作用メカニズムの解明について、手法の変更が生じたものの予定通りターゲット分子の局在を明らかにできた。また、OsAFP1がアポトーシスを誘導することによりターゲット細胞を殺菌することを示した蛍光試薬を用いた解析は想定以上の結果である。一方、研究計画[1] HsAmyおよびOsAFP1の内毒素結合メカニズムの解析とin vitroにおける抗炎症作用の検証について、組換えHsAmyの大量生産には至っておらず、やや予定から遅れている。研究計画の「研究が当初計画どおりに進まない時の対応」に記述したとおり、Phichia酵母を利用した発現手法の検討も視野に入れて進める必要がある。以上のように、総合的に判断して、本研究は概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
上述の研究計画の進展状況も勘案して、次年度は研究計画[1]を優先して進める。その上で、立体構造情報を用いて部位特異的変異体を設計し、解析することによりHsAmyやOsAFP1の抗炎症活性・抗真菌活性に関わる構造要因を明らかにする。OsAFP1の立体構造は解明されておらず、当初はホモロジーモデルを使用する予定であったが、研究計画の進捗が想定以上であるため、X線結晶構造解析やNMRを利用してその構造を明らかにすることも視野に入れる。また、研究計画[2]においては、膜脂質との結合性を解析するPIP Plateや市販されている入手可能な細胞壁成分とOsAFP1との相互作用をELISAや分子間相互作用解析により検証し、細胞壁内のターゲット分子を特定に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】 特に研究計画[2]のターゲット分子の同定に関して、複数年にまたいだ計画を立案したため予算額を多めに見積もっていた。その結果、次年度使用額が生じた。そのため、次年度における残額の使用計画は立っており、ほぼ予定通りに執行されている。 【使用計画】 次年度は、研究計画に沿って、主にOsAFP1の細胞壁成分からのターゲット分子の探索を行う。それら膜構成成分やそれらを固定化したPIP Plateなどの購入に充てる。また、また、HsAmyの発現量が低いことから、現在のヒト培養細胞を用いた系の最適化、または無細胞発現系や酵母細胞を利用した発現系を用いて発現量の向上を図る予定である。それらに必要な器具・試薬の購入費に充てる。
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