研究実績の概要 |
研究代表者は、ヒト由来α-アミラーゼHsAmyおよびイネ由来ディフェンシンOsAFP1が細菌内毒素と結合することを見出した。また、OsAFP1は歯周病の重症化に関与する日和見感染真菌に対して強い抗真菌活性を示す。本研究においては、[1] HsAmyおよびOsAFP1の内毒素結合メカニズムの解析とin vitroにおける抗炎症作用を検証し、[2] OsAFP1の抗真菌作用メカニズムの解明を行う。これにより、天然物由来の素材を利用した新たな歯周病治療法を開発するための基盤技術の構築を目指す。研究計画2年目において、以下に挙げる成果を得た。 [1] HsAmyおよびOsAFP1の内毒素結合メカニズムの解析とin vitroにおける抗炎症作用の検証……昨年度から、ヒトHEK293細胞を利用して組換えHsAmyの大量生産を進めている。本年度は、細胞外への分泌シグナル配列を付加して発現系を構築した。その結果、250 mLの細胞培養液から約5mg程度の可溶性タンパク質を得ることができた。また、質量分析や内毒素結合能の解析により、天然型HsAmyと同等の性質を有することを明らかにした。 [2] OsAFP1の抗真菌作用メカニズムの解明……過去の解析から、OsAFP1のN末端およびC末端の10残基程度のアミノ酸配列が抗真菌活性に関わることが示唆されている。そこでこれらの領域内のアミノ酸残基を置換した変異体を12種類設計し、抗真菌活性を測定した。特に、R1, H2, L4, R9, F10, L39, およびR41における変異体の活性が顕著に低下したことから、OsAFP1におけるこれらの領域が抗菌活性に直接的に関与することを示した。また、OsAFP1におけるそれら残基の役割をより詳細に明らかにするためにX線結晶構造解析を進めており、既に3オングストローム分解能程度までの回折データを取得している。
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