研究代表者は、ヒト由来α-アミラーゼHsAmyおよびイネ由来ディフェンシンOsAFP1が内毒素中和活性を有することを見出した。また、OsAFP1は歯周病の重症化に関与する日和見感染真菌に対して強い抗真菌活性を示す。本研究においては、[1] HsAmyおよびOsAFP1の内毒素結合メカニズムの解析とin vitroにおける抗炎症作用を検証し、[2] OsAFP1の抗真菌作用メカニズムの解明を行う。これにより、天然物由来の素材を利用した新たな歯周病治療法を開発するための基盤技術の構築を目指す。 [1] HsAmyおよびOsAFP1の内毒素結合メカニズムの解析とin vitroにおける抗炎症作用の検証……前年度までに、HEK系細胞を使用してHsAmyの組換えタンパク質の生産に成功した。本年度は、生産した組換えHsAmyのX線結晶構造を決定し、内毒素結合に関わると推定されるドメインを予測した。また、そのドメインを構成するアミノ酸を置換した変異体を作成し、内毒素との結合に関与するアミノ酸を同定した。 [2] OsAFP1の抗真菌作用メカニズムの解明……膜脂質との結合性を解析するPIP Plateを用いて、OsAFP1が真菌の細胞膜内に存在するリン脂質PI(3)Pと結合することを明らかにした。さらにOsAFP1のX線結晶構造を明らかにした。その結果、OsAFP1は二量体構造を形成し、各単量体の接触面にリン酸イオンが1分子結合していたことから、この領域にPI(3)Pを結合することが示唆された。過去の研究により、OsAFP1はターゲット細胞にアポトーシスを誘導することを示した。上記の結果と架橋試薬を用いたクロスリンキング解析により、OsAFP1は二量体を形成して真菌細胞膜内のPI(3)Pと結合し、最終的にアポトーシスを誘導して殺菌的に作用することが示唆された。
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