Transglutaminaseである Factor XIII-A (FXIII-A) は、さまざまな組織や細胞中に、Aサブユニット2分子から成る Cellular-typeの FXIII-A (cFXIII-A)として、広く生体内に分布することが近年明らかとなってきた。しかし、cFXIII-Aがどのように活性化されるのかについては、現在も未解明な部分が多い。 そこで、cFXIII-A が確実に発現増加するin vivo の反応系として、我々はゼブラフィッシュの視神経損傷モデルを用い、この cFXIII-Aの活性化機構について研究を行った。ゼブラフィッシュの視神経をクラッシュすると、cFXIII-A は損傷直後から網膜と視神経の両方で発現上昇が観察され、視神経の再生・修復に大きく関与することがわかった。この時、網膜で発現する cFXIII-AのcDNAについてクローニングを行ったところ、視神経損傷後のサンプルからは 5'領域の一部が欠如した短いタイプのcDNAが多数出現するという、独特の変化を示すことが分かった。これらのクローンを詳細に解析したところ、通常の血液凝固過程では、酵素の活性化のためにトロンビンによって切り放される FXIII-AのN末端を構成するタンパクの一部で、「Activation peptides」に相当するコード領域が欠如したショートタイプのcDNAであることがわかった。さらに、翻訳開始領域の5'側の配列を検索したところ、Heat shock factor(HSF)1 の結合領域が2か所確認された。HSF-1は、ゼブラフィッシュ視神経損傷直後から発現上昇する急性相反応物質であり、HSF-1とFXIII-Aの相互関係を明らかにするため、ChIP assay を行った。その結果、HSF1が誘導する cFXIII-Aの活性化機構の存在が強く示唆された。
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