研究課題/領域番号 |
17K01946
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
新美 友章 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (30377791)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 再生医療 / 骨形成 / 骨芽細胞 |
研究実績の概要 |
乳児期に頭頂骨の骨と骨のつなぎ目が早期に癒合することで知られる頭蓋骨縫合早期癒合症(狭頭症)の原因遺伝子のひとつであるNELL1は、頭蓋顔面の骨格形成に関わる分泌タンパク質をコードしており、その骨形成作用に基づいた骨再生治療への応用が試みられている。しかし、NELL1による骨形成作用の分子基盤には不明な点が多く、臨床応用する際のボトルネックとなっている。本研究課題では、(1) NELL1の部位特異的な受容体の同定と下流のシグナル伝達経路の解明、(2) NELL1タンパク質の機能領域の同定とそれらの改変による新規骨形成因子の創成を試み、新しい骨再生治療法を開発することを目的とした。 初年度は、NELL1の新奇受容体の同定に取り組んだ。NELL1の相同タンパク質であるNELL2の新奇受容体としてRobo3が同定されたことから、Roboファミリー受容体とNELL1の結合能について解析を進めた。NELL1とRoboファミリー受容体(Robo1~4)の結合を共免疫沈降法および固相化結合実験によって調べ、NELL1がRobo3とのみ結合することを明らかにした。しかしながら、Roboファミリー受容体の細胞外領域の欠失変異体を作製して同様の実験をしたところ、NELL1はRobo2にも結合することを見出した。また、培養細胞にRobo2およびRobo3を発現させて、NELL1との結合を調べたところ、in vitroの実験結果と一致した。Robo3がおもに神経系組織で発現しているのに対して、Robo2は間葉系組織での発現も多く見られることから、Robo2がNELL1の受容体として機能する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NELL1の結合タンパク質としてRoboファミリー受容体の一員であるRobo2を同定した。NELL1とRobo2の結合領域をそれぞれ同定し、NELL1とRobo2の結合様式を推定した。現在、さらに詳しい結合部位の解析と解離定数の測定実験を進めている。また、これらの研究成果を論文にまとめるべく、反復データの取得と論文執筆を同時に進めている。長年、不明だったNELL1の新奇受容体がRobo2に同定されつつあるという点で、研究の進捗状況はおおむね順調であるといえるが、早急にin vivoにおけるNELL1とRobo2の結合を証明し、下流のシグナル伝達経路を同定しなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
intactなRobo2はNELL1と結合することはできないが、ドメイン欠失型のRobo2あるいは単量体のRobo2がNELL1と結合することを見出している。したがって、生体内でNELL1がRobo2に結合できる条件の検討を行っている。例えば、タンパク質分解酵素が活性化する条件や、タンパク質のフォールディングを変化させるような条件が骨芽細胞の分化誘導過程で起こりうるかを調べる予定である。 骨形成過程におけるRobo2の関与を調べるために、Robo2のノックダウン実験と、すでにNELL1受容体として知られるインテグリンβ1との関連を調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 骨髄由来幹細胞への遺伝子導入実験のために予定していた遺伝子導入装置の購入を取りやめたことによる。NELL1の新奇受容体候補としてRobo2を同定したことにより、NELL1-Robo2結合の生理的意義を解明することに研究資源を集中したため、遺伝子導入実験は今年度以降に行うこととした。遺伝子導入装置は今後の実験の進捗状況に応じて必要となるが、今年度はNELL1-Robo2結合実験および投稿論文作成のための資金として使用する。
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