本研究では、金属含有酵素の機能発現メカニズムに対する、活性部位である遷移金属イオン近傍を覆うタンパク質構造の動的な構造効果を、チオールサブチリシンをモデルタンパク質として検証した。その結果、チオールサブチリシンのシステイン残基に結合したCu(II)イオンの性質は、その近傍の構造的な要因だけでなく、その部位から遠く離れたカルシウムイオンの結合状態によって制御されることが実験的に証明できた。その遠く離れた部位の構造的摂動は、タンパク質全体の構造柔軟性効果によって説明することができ、タンパク質という自由度の大きい構造が、結合した金属イオンの性質を決める要因であることを実証することができた。
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